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支倉凍砂「マグダラで眠れ」感想

マグダラで眠れ Amazonのページ
マグダラで眠れ 電撃文庫のサイトの紹介

アフィサイトじゃねーからアマゾン張っても仕方ないんだけど、張らないのもアレかなと。
あ、ネタバレはしまくりだから覚悟してね。




前作「狼と香辛料」で見事、中世ヨーロッパ暗黒時代の行商人とメルヘェンな人狼の話を書き切った支倉凍砂先生。
新作「マグダラで眠れ」は同じ時代背景での、地に足着いた錬金術師、鉄や亜鉛の精製や冶金といった実験を行う錬金術師の話である。そして純粋そうな修道女……

支倉凍砂先生の作品は圧倒的なリアリズムがあるよね。いや、リアリズムというよりも、専門的な事柄の薀蓄がプロっぽい感じを出すというか。
狼と香辛料では中世ヨーロッパ風の商売の手法や手練手管が、いかにも熟練の行商人らしく、それで危機を乗り越えるのが面白さだった。まあホロに頼ってた部分もままあるが。
マグダラでは錬金術師の技や知識がそれにあたるのだろう。単純に薀蓄小説としても面白いし、時代背景と合わせて考えると中々興味深い。錬金術師の工房にいる時のクースラとウェランドは超一流だ。


キャラクター方面から読むと、これまた面白いところがある。

クースラ、語り手である男主人公であり、錬金術師である。狼と香辛料のロレンスと比べると立場が違うからかかなり悪人な印象を受ける。人をからかったりとか騙したりとか結構人が悪い。でもなにか少し甘いところはロレンスに似ているか?しかしやるときは殺る人。毒殺暗殺なんのその。

同じ錬金術師のウェランドはかなりアクの強い人物。独特の話し方に「錬金術師」らしいぶっ飛んだ精神構造。人心掌握術に長けている。普通に悪人だけど錬金術師として純粋。

この二人は錬金術師、支配構造から逸脱する身分であるが故に結構無茶をする。錬金術師がテーマの作品なので底がまず持って魅力だろう。

そして修道女フェネシス。実はケモ耳、一種の獣人と言う訳だ。
このキャラが「狼と香辛料」と「マグダラで眠れ」の読後感と言うか、印象を変える存在であろう。そして接点でもある。
純粋無垢で、無知で潔癖症なところがある幼い修道女。髪も白髪なのでシルエットは真っ白。
ホロと比べると、知恵も力も無いし、非常に打たれ弱い。にもかかわらず好印象を与えるのは何故か。
真面目で向学心があり、話やいいつけは黙って聞く。騙されたりすると一々反応が面白い。一種のツンデレというわけだ。
ホロも若干ツンデレのケがあったけど、やっぱホロはなんだかんだいって強すぎるのよね。色々。
そういう意味で、無力なフェネシスはそれでも頑張ろうと努力するさまがけなげで良い。
そして獣人である。ホロもだったけど、先生の趣味なのかな?ホロは狼が基本だったっぽいけど、フェネシスは先祖が、というところだろうか。狼と香辛料のキャラや場所との絡みはあるか。

今回の敵役であるポーストは、いわば商人である。前作「狼と香辛料」でメインテーマとして扱われた職業である。
中々強力な立場であり、手腕も凄まじい商人。しかし物語の最終盤でクースラに暗殺される。※追記間違い。生きてた。でも錬金術師によって商人が追い詰められた事は事実。
これによって前作と今作の違いを明確に表したのではないか。前作が商人の支配する世界観ならば今作は錬金術師が蠢く世界観というわけだ。支配構造から逸脱している錬金術師だからこそ、社会制度に守られた商人を暗殺できる蹴落とせる。
明確に商人と錬金術師の違いを示した訳だ。



前作のあまりの印象から見事脱却したマグダラ。
次巻以降どのような展開が待ち受けるのか。オルハリコンは作れるのか。フェネシスは幸せになれるのか。
支倉先生ならば期待は裏切られないだろう。
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テーマ:読書 - ジャンル:サブカル

  1. 2012/07/11(水) 03:09:37|
  2. | トラックバック:0
  3. | コメント:4
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コメント

No title

ポーストは暗殺されて無いよぉ、314pの4行目を読みなぁ
  1. 2012/07/12(木) 01:32:31 |
  2. URL |
  3. #sSHoJftA
  4. [ 編集 ]

No title

そのようだねぇ そのうえの誤字も気になるねぇ
  1. 2012/07/12(木) 02:20:28 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集 ]

Re: No title

> ポーストは暗殺されて無いよぉ、314pの4行目を読みなぁ
あ、完全に読み落としてました。ご指摘ありがとうございます。

クースラも甘いところがありますね。それによって利益を得たわけですが。
中途半端に生かす事で後々面倒な事になったりしますかね?
なんにせよ、ロレンスのそれよりも直接的な手段ですね。ロレンスも脅迫はしましたけど、脅迫も交渉ですし。
こういった違いが今後どのように表れるか、次巻以降に注目したいです。
  1. 2012/07/12(木) 22:25:13 |
  2. URL |
  3. たていと1 #-
  4. [ 編集 ]

Re: No title

> そのようだねぇ そのうえの誤字も気になるねぇ
ありがとうございます。誤字誤変換は常に存在しうるのでご指摘は非常にありがたいです。
  1. 2012/07/12(木) 22:26:55 |
  2. URL |
  3. たていと1 #-
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