ネット世代の雑評論

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「とある飛空士」シリーズ、追憶・恋歌・夜想曲、読んだので感想

とある飛空士への追憶 - Wikipedia
とある飛空士への恋歌 - Wikipedia
とある飛空士への夜想曲 - Wikipedia

ガガガ文庫の主力看板としての地位を築きつつある「とある飛空士」シリーズ。出てるの全部読んだので感想書いてく。

まず個々作品ごとの感想。
とある飛空士への追憶

非常に清潔なストーリーが読者の心を奪う。
姫を乗せて海原を行く、少年少女のボーイミーツガール、身分違いの恋、圧倒的な敵の強さ、それを乗り越える主人公シャルルの強さ、ファナの意外な才能、ラストシーンは華やかだが寂しさを感じさせる。

特に敵戦闘機との戦闘シーンの緊迫感は凄い。敵国である天ツ上は日本のモチーフが強く、その戦闘機「真電」は第二次大戦初期の零戦の強さを想い起こさせる訳だが、零戦の弱点である急降下をシャルルが思いつき行うのだがビクともしないと言う展開はニヤリとさせられた。その後の展開も脳幹に響く凄まじさ。

舞台設定も結構面白い。海洋が多くを占めるその世界観故の物語もある。戦闘機の戦いを描く為の世界観だがそれ以上の効果も引き起こす。

作中の社会政治や国家が腐っているのが空への畏敬と逆転のカタルシスを生むのかもしれない。

シーンのそれぞれが芸術的に極まっており、感情が大きく揺さぶられる。
一巻完結。至高の一冊といってもいいかもしれない。完成された美しささえ感じる。


とある飛空士への恋歌

「飛空士」世界の謎を解き明かすという軸から発展していくキャラ重視の物語。

昨今のライトノベル、漫画、アニメはキャラクターをいかに書くかというのが主要なテーマである。
そういう観点からすると一番ライトノベル的ともいえるのかもしれない。
しかし、結構バンバンとキャラ殺したり、キャラの変容(成長)を容認するあたり必ずしもそうとはいえないか。

この作品は五巻構成。漫画やライトノベルの巻数がやたらめったら多いのはキャラクターを描いていくためである。よってちゃんと長くなっている。
キャラがどう考え、どう動き、どう関係し、どうなった。これは少々では描き終われない。
それ故読んでいると愛着がわき、キャラに価値が出てくる。

空飛ぶ島イスラの旅路で様々なものと巡りあい、様々な出来事が起きる。その中でキャラは命を持って動く。

キャラを動かすためのストーリー、世界観も壮観な出来。
神話的な世界でちょっとした天動説な形。設定それ自身面白いが、その中での国の形も中々考えさせる。
ま、神が神がという設定は好きじゃないが。神話は神話なのだろうか。もうちょっと合理的な説明も欲しいところ。納得は出来ない。

追憶に出てきた要素が絡んでくるのは楽しい。キャラ重視ならこれもまた必要。
海猫はこれからのシリーズにも出てくるのだろうか。


とある飛空士への夜想曲

追憶に出てきた敵のエース、千々石の物語。

第二次世界大戦に類似したところがある中央海戦争。戦争についてという深いテーマ、天ツ上=日本の精神、追憶で書かれた戦いの結末。そういったものが主人公、千々石の生涯を書く事で表現されている。

戦争が生む結果は目を背けたくなるような酷いものだが、戦う事それ自体は崇高な事だと思わせられる。
絶望的な戦況に立ち向かう千々石達。物量で押す近代的な戦争のなかで唯一守られた聖域となった戦闘機の空。
その中で生きるという事は何か。

海猫と魔犬千々石。両軍エース二人の戦いは壮絶を通り越して鮮烈を極める。
近代戦争の濁った渦の中で起きる奇跡。
これほどカタルシスに満ちた終局は少ない。

最後に千々石は死ぬ。
個人的にユキ関連のエピソードは冗長な気もするが、テーマ性を考えると必要なのだろう。
デッドエンドもいいところはあるが、やはり生きていて欲しかったという感情も無くはない。



ここから総まとめ。
全般としてライトノベルに珍しいほどの完成度を誇る作品群であった。
テーマ性が大きく、読者に色々考えさせる。
キャラの心情描写も良く練られて一貫している。
ストーリーもそれ一つで自立できるほどの良さがある。

欠点を上げるなら尖った対比だろうか。
空を美しく描くために地上、政治を膿ませる。腐った社会は陰鬱だ。
それがために失っているものもあるだろう、
後はまあキャラデザか?挿絵が少ない本格派だからかもしれないが、中々キャラの顔が思い浮かばない。




非常に印象的な作品。
独自の立ち位置を持つライトノベル的でないライトノベル。
強烈なクオリティを持つ。特に追憶は一巻完結で読みやすく完成されているのでオススメ。一般書籍好きには特に面白いかも。ライトノベルへの扉となるか?

シリーズの四作目も製作中との噂。期待。
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テーマ:雑記 - ジャンル:サブカル

  1. 2012/01/22(日) 02:42:00|
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