ネット世代の雑評論

主にネット上に散らばる各々の事象についての紹介、及び評論

「血潜り林檎と金魚鉢男」一巻感想

漫画版学園キノ2のついでで買った本の感想。本読みの病気。
というか学園キノ、原作通り酷くて笑った。下手すればクソ漫画と言われかねないレベルで勝負するのが素晴らしい。原作も小説表現を逸脱してたけど、漫画版も中々やりすぎ。サモエド仮面がまた酷い。流石。


「血潜り林檎と金魚鉢男」第1巻 人を金魚に変える金魚鉢男。対抗出来るのはスクール水着の少女のみ!?  3階の者だ!!~ブログ編~

上の記事を見て、店頭で見かけたから買って読んでみたのだが、相当な衝撃、一線級の、極上の漫画であるという直感の稲妻が走った。


あらすじというか、まあ概要でも書く。三行で。改行は気にしない。

現代、高校的世界観。主人公昊介はスクール水着の少女、林檎に出会う。血潜りという仕事をしているらしい。
「金魚鉢男」に吸血されると金魚になってしまう。血潜りとは血の中に潜ってそこから救う仕事らしい。
林檎は新米で腕も悪いが、昊介の助けを得ながらどうにか頑張る。


こんなところ。はしょりすぎた感もあるが、そういうとこはおいおい説明しよう。

まず主人公の姉が金魚鉢男に襲われる回想からはじまるのだが、この金魚鉢男がまず凄い。
スーツに首から上が金魚の入った金魚鉢。スーツの首から上が器物というのは映画見る前に見せられる盗撮男を思い出す。どうでもいいが。
吸血鬼とも称されるが、別に古典的吸血鬼のような設定は無く、ただ血を吸うから吸血鬼。
雨上がりに水場で出血していると現れる。金魚鉢に入った金魚(出目金)が顔のように見える。
金魚鉢から金魚が飛び出し、首筋に吸い付く。金魚毒と呼ばれるものを残し去っていく。金魚毒は「魂血」を吸って大きくなり、そのうち増殖し体中に広がるとその人物の肉体は金魚となってしまう。かなり多くの人物が金魚となってしまっているようだ。
また、吸血を邪魔しようとするものには水滴のようなものを指で飛ばす。これに当たると地上にいながら溺れる。
水溜りの中に隠れるという芸当も可能のようだ。

吸血鬼といえばドラキュラあたりの、日に弱く十字架に弱くにんにくに弱く流水に弱く、蝙蝠などに関連付けられるそれを想起するが、金魚鉢男は相当変わっている。
正体は一巻では不明だが、弱点らしい弱点は無く、台詞も無く非常に不気味。吸血した相手を金魚にするというのは金魚の吸血鬼として想起できる能力であるが、金魚という全く無力な観賞魚に変えてしまうというのはむしろ童話の魔法を想起させる。

金魚と言うチョイスがまた素晴らしい。
観賞魚としてその美的さに権威を持っている文化な訳だが、こういう交配を重ねて作られる観賞用の生物は自然界的に見ると奇形のようなものだ。
金魚毒として描かれる金魚はちょっとしたコズミックホラーにも見えるし、金魚にされた人間を飼う家族は嫌に前向き、ポジティブに描かれ、日常的に描かれているところがむしろホラーだ。
人間なのか金魚なのか。金魚にされた人間を人間だった時の日常のように送らせたいとかいって金魚に体操のようなものをさせたり言葉を教えさせるような事をしているのは怖気が走ったが、漫画内でそれが無批判に受け入れられているのが何よりも神経に来た。

金魚となると人間とは全く分かり合えないレベルの生物。哺乳類や鳥類、最悪爬虫類、両生類までならかわいがったり、心が繋がっているように感じる事もありうる(私はあんまりそういうの無いけど)が、魚類、しかも金魚となるとこれはもうモノに近い感覚だ。
理解できないものに恐怖する。まだ正体もわからない金魚鉢男。ホラーは謎を謎のままにするという手法もありだろう。


次に「血潜り」林檎のフェティッシュなキャラクターについて語ろう。
まずスクール水着が仕事着。スクール水着のフェティシズムはこの記事に収まる長さでは書けないが、有名で有力なものである。
服を着るのは恥ずかしいらしい。仕事用具は全て日用品やつまらない物のように見える。スクール水着の中から4次元ポケットのように色々出してくる。一般人から見ると変人、変態のようにしか見えない。
そして天然ドジっ娘。血潜りには泳ぎが上手くないと捗らないが、林檎はもう見るから下手。ノタノタと泳ぐ。その崩れたフォームも狙っているのだろう。
そうして血潜りとしては超新米で腕も悪く、仕事でも良くヘマをやらかす。それが危機的状況を生み出すのだが・・・
性格としては非常に明るい。この日本の状況からいって好まれるタイプのアレだろう。チャンピオンのりびんぐでっどだっけ?アレの主人公思い出す。
頬を引っ張って自己暗示をかけたり、警察に捕まって国家権力を嘆いたりと相当な「萌」キャラ。
作品の雰囲気から奇妙に浮いてるのが象徴的で、ヒロインの特権と言う事か。


そう作品の雰囲気。かなりハードである。
日常シーンから少しズレた印象を見出せなくも無いが、それが金魚鉢男が現れると急に引き締まる。
金魚にされれば、死ぬ訳ではないもののそれとほとんど同じ、文字通り人生を奪われる。
血潜りは金魚鉢男に吸血されてから魂血を吸いつくされ金魚になるまでに「すくう」仕事。宇治拾遺物語の藤六かよ。
時間制限があり、また血を吸って巨大化した金魚毒も恐ろしい。そんなところで林檎がヘマしたり予想外の事態が起こって状況が悪化する。
そうして本当にギリギリのところで解決する。もうダメなんじゃないかと何度も思うほどに。
安易に物語を組まず、ストーリーも重視している点が気に入った。



「血潜り林檎と金魚鉢男」は、作品の世界観設定、キャラクターデザイン、ストーリー、絵。どれを採っても一流。
漫画は評価するバロメーターの種類が多くある。一つの突出した点で他の欠点を補う、覆い隠す事も可能だが、あらゆる点で高評価というのもある。この作品は後者だ。
極限まで練られて作られた漫画作品は芸術品としての後光を帯びる。
王道漫画というものがどういうものかはわからないが、作者の独特のセンスをフルに活用している。
大衆向けと言うベクトルかどうかは微妙なところであるが、その圧倒的な作品力は十分に「売れる」エネルギーを持っている。
近い将来、より知名度が上がる事が予期される作品である。

2巻は2012年2月15日発売予定。
ネットで連載中の漫画としては最近の出世頭ではなかろうか。
今後の「血潜り林檎と金魚鉢男」とネット漫画の将来に期待したい。
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テーマ:雑記 - ジャンル:サブカル

  1. 2011/10/28(金) 02:51:12|
  2. | トラックバック:0
  3. | コメント:4
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コメント

No title

REXに一度読みきりで載ってた事がありましたが、ネット漫画だったんですね。ガロ的な印象を受けたのを覚えています。
  1. 2011/10/28(金) 23:39:37 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集 ]

Re: No title

> REXに一度読みきりで載ってた事がありましたが、ネット漫画だったんですね。ガロ的な印象を受けたのを覚えています。

ガロ的ですよね。今もうガロ無いですけど。
シュルレアリスムというか、掴みどころがないというか。まあ玄人好みであるのはそうかもしれないですね。

ネットだけで雑誌を作るとローコストで作れますがやはりリターンも少ないです。
とはいえネット配信というのは電子書籍メディアの普及にも伴ってこれから増えていくのではないでしょうか。確か海外版の週刊少年ジャンプもネット配信だけだったような。
ともかく機会が与えられれば才気を見せる作家もいるでしょう。その点でもネット配信と言う方式は有望です。単行本はやはり紙で欲しいですが。海の大陸ノア×とか。

結局のところデジタルデータは信用できないところがありますし、電子書籍リーダーも進化していますがやはり紙の融通性に適わない部分も大きいので。まず値段でしょうか。まあ電子書籍あんまり好きじゃないんで情報集めてませんが、この辺は技術革新を待つべきと思います。

HDDの中に並んだデータよりも本棚を埋め尽くす書籍のが良いと思えるのは何かしらの偏見でしょうか。
  1. 2011/10/29(土) 03:58:39 |
  2. URL |
  3. たていと1 #-
  4. [ 編集 ]

No title

表紙を見て衝動買いしました。ネットで連載してたとは。
金魚鉢男と血潜りは人に潜る際に開ける穴が同じ形。
元々血潜りが持っていた能力が何らかの形で金魚鉢男を作った。
みたいな展開にはなってほしくないですねw
よくあるストーリーだし主人公に感情移入しにくくなっちゃっう。
  1. 2013/08/28(水) 12:50:48 |
  2. URL |
  3. #-
  4. [ 編集 ]

Re: No title

> 表紙を見て衝動買いしました。ネットで連載してたとは。
> 金魚鉢男と血潜りは人に潜る際に開ける穴が同じ形。
> 元々血潜りが持っていた能力が何らかの形で金魚鉢男を作った。
> みたいな展開にはなってほしくないですねw
> よくあるストーリーだし主人公に感情移入しにくくなっちゃっう。

最近はネット連載の漫画も多いですし、かなりすごい作品や大御所の作品も多いですね。キン肉マンとか。やはり雑誌媒体だとお金がかかりますからね。雑誌単体では赤字で単行本でやっと黒字という体制なので、ネットは宣伝力が低くても福音なのでしょう。

傷口から入るというのもこの作者の感性ですが、どういうストーリーに落ち着くのか不安なのはありますね。
まあ、全ての謎が明かされるとも思えませんが、今後の展開に期待です。
  1. 2013/08/28(水) 14:06:33 |
  2. URL |
  3. たていと1 #-
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