ネット世代の雑評論

主にネット上に散らばる各々の事象についての紹介、及び評論

「キノの旅XV -the Beautiful World-」 感想

電撃文庫2011年10月の新刊
著者 時雨沢恵一
イラスト 黒星紅白
キノの旅XV -the Beautiful World-

の感想。アマゾンへのリンクとかいいよね?気になればググればいいし。
ネタバレは注意。まあ公式発売日に書くけど。



まず表紙。やっぱ黒星紅白先生(以下★)、センス凄い。いまさらジャケ買いって層もいるのかどうかしらないけども。
本を閉じるキノ。コートは無い。胸も無い。
キノの後ろには様々なものが放射状に(後光のように?)置かれている。
熱帯魚、花、キノコ、新聞、虫、ビー玉、飛行機、エンジン、列車、金貨、鳥、鍵、蝶、電灯、絵の具・・・幾つかは以前のキノの挿絵などで見たことがある。この総まとめ感や本を閉じる動作や3巻ごとに区切りにしてるとか何とか時雨沢先生あとがきで書いてた気もするし、最終巻かもしれないという噂があったがそんな事は無かった。

表紙をめくるとビー玉を手にスマイルするキノ。ビー玉は特に以前の挿絵で見ない(確認してねえけど)と思ったらそこか。

裏表紙はカメラフィルムのネガ?
何が写っているかイマイチわからないが漫画風にも見える。


ここから内容の感想とか。

口絵イラストノベル
「見つけてしまった国」-Eureka!-

師匠達、シズ達、キノ達が同じ国を訪れて・・・と言うタイプの話。
温泉を観光資源と見出す師匠。温泉の利益で腐った国民に失望するシズ、温泉の失われた川から砂金を見出すキノ。

★のキノ達のデフォルメイラストや、国の変動する様を地層まで含めて見る形など結構面白い。
地下資源は魅力だよね。でも恵まれすぎるとそれに頼りすぎてしまう。盛者必衰。でもまああればある分も受けるのが人間。

ちなみに混浴ではない。入浴シーンはある。イケメンさんのデフォルメだけど。

砂金は結局どうしたのかな。キノが自分だけ採れるだけとった?肉体労働するかなあ。そういえば日本の川でも砂金は取れるといえば取れるらしいね。頑張っても最低賃金くらいしか儲けられないらしいけど。


口絵イラストノベル
「白い国」-Taste!-

キノ主観の話。
人工物は全て白で統一された国。★のイラストが美しい。
増えすぎる貝、生態系の異常の話。文化にも理由があったり。
捕食者である鳥を全部食べたら貝が増えすぎた。肉食獣のが数少ないもんね。一応ライオンバーガーってのも現実にあるらしいけど、基本的に肉食獣が食卓に上がらないのは理由がある。飼うにしても餌代高いし。
しかし★のガチ風景画が凄まじい。色付きページだし、鳥がいる時代のそれは水墨画を思い起こさせる。
表紙キャラ絵、デフォルメ絵、風景画となんでも描いてる。
鳥は飽きなかったのか、飽きる前に全滅したのか。肉食獣ですからねえ。

目次のエルメスにまたがって銃を構えたキノ、実際バイク乗りながら当たるもんなのかな。まあ威嚇とかそういう目的かもだけど。構図は下から。エルメスの機構がよくわかる。しかし右下に書いてるDesign Yoshihiko Kamabeって誰なんだろ。前から思ってたけど。検索したらなんかシャナとかミミズクとか出るけど。

ポエム的なの。師匠とハンサムが車に。後ろにはギチギチになるほど(札束が?)積まれている。
確かに善悪は人の決めるもの。自分が悪と思って何かする人間はショッカー的組織ぐらいだ。


プロローグ
「戦って死ぬということ・b」-Order!・b-
挿絵では軍人らしき男が地面にひざを付き狼狽している。シズ一行はそれを後ろから見ている。

キノの旅恒例のab分解短編で、先に物事の終わり=bを読むアレ。
勿論これだけでは何もわからないけど、本編全て読み終わった後最後に読むエピローグでそれが何かわかるという。今回はその構造を上手く使っていると思う。謎が謎を呼び期待が掛かる。


第一話
「ケダモノの国」-Standing Beast-
Standing Beast、立っている獣?人は直立二足歩行をする理性を持つ生物だが、やはり獣といわざるを得ないときもある。まあ単純に挿絵にもあるクマの事かもだけど。クマはなんか知らんけど立ってるよね。

結構長い中篇。トラック!?12巻に出てきた奴隷ちゃんの話か?と期待させておいて、残念師匠ちゃんでした!というオチ。
冬は豪雪、夏はドロドロな道でトラックにキャタピラ(クローラーらしい)履かせてやっとこれるような場所。トラックは燃費が悪いから必要なくなったらさっさと売りさばくつもりらしい。車はトラックの中。
今回は珍しく儲け話も無く珍しそうだからと言う理由で来た師匠。
そこで熊(羆)害と恐るべき真相が・・・

師匠とハンサムの話の中では割と人間らしい話。豚肉がおいしいとかなんとか。時雨沢先生かなり食事描写上手いよね。絵のある漫画でさえおいしそうに食事を描く漫画家は貴重だが、小説家の食事描写の議論はあんま無いよね。

熊は恐ろしい動物。猛獣の中でもかなり怖い。昔北海道でも悲惨な事件があったんだっけ?人間は簡単に食べれるから人間の味を覚えた猛獣は人間ばかり狙うようになる。銃だって人間を殺すために作られたものじゃあ、うまくはいかないし。

スラッグ弾は人を撃つ物じゃない。大は小をかねるけども、食事の前には不適当かもね。


第二話
「マニアの国」-What I Want & Why I Want-
挿絵は大量のキノのフィギュア。コート着てるのとか着てないのとか、泣いてるのとか二挺拳銃してるのとか、大きくてリアルなのとか小さくてデフォルメされてるのとか。

キノ主観。キノにまた新たな武器が増えちゃったよと言う話。ナイフ型パースエイダー。マニアからの貰い物。
まあナイフなら元から大量に持ってるけど、時雨沢先生捨てられない性質だからなあ。
キノは売る事も考えてるみたいだけど・・・

なんでも入るポーチって四次元ポケットかいな。エルメス造った国ならあるのかね。まあ喋るモトラドとか造れるならねえ。
エルメスは改造嫌いらしい。まあどこがどうやって喋ってるのかもわからんのだけれども。

第三話
「過去のある国」-What We Have Taught.-

キノの話。昔師匠が語った土地編。今回は遺跡と見せかけて・・・

人の過去、国の過去。過去は実際に確かめることが出来ない。唯一無二の貴重なものであるから偽者も多い。
嘘は千回言えば自分もその嘘が本当だと信じれてくる。人の記憶は曖昧なもの。簡単に変わる。しかし変わらないものもある。複雑微妙。それが精神。

というかエルメスって起こす必要あるのか?起きる前に動かせばいいのに。喋らないだけでしょ?起動とかも司ってるのかな。


第四話
「フォトの日々」-the Beautiful Moment-
このタイトル。フォトというのがまず何かわからないが人の名前だろうか、裏表紙のフィルムを思い出すが、「の日々」というのがいつかのあとがきのキノの旅というタイトルのパロディに似てるなあと連想、そして英語のサブタイトルが・・・
そして挿絵!謎の少女に箱を思わせる形の小型なモトラド!

12巻に出てきた奴隷ちゃん再登場回!待ってたぜ!!!!!
奴隷ちゃんはフォトという名前になったらしい。モトラドはソウ。

モトラドがどうして生まれたのかどうして喋るのか誰も知らないし気にもしないらしい。

カメラを使う・・・って学園キノ5巻のエピローグのアレか!なんでスピンオフ作品で先に出てんだよ!いやアレが奴隷ちゃんかもしれないって話は出てたけど、そういうトリックか。新しい。

フォトは生まれた国の戒律を信じ、非常に利他的な性格。この世界では長生きできないだろう・・・とモトラド、ソウは予想した。
あの後金目の物を積んでトラックで他の国を探したらしい。フォトは嫌がったがソウが頑張って説得した。
パースエイダーを教えようとしても拒むし、強盗でも現れたらひとたまりも無い。

燃料が切れるギリギリで国を発見。運がいい。
人がいないかもとかガソリンないかもとか考えたけど普通にある国だった。運がいい。
ドーム建築があるぐらいには進んだ国でまたやたらと広い。
フォトは良い国だったら住みたいと言って、その判断をソウに任せていた。あまりにもいい条件の国だった。怪しいほど運がいい。
なんでトラックに少女一人とモトラド一台だけで旅してるのか聞かれたらフォトは全部話してしまった。トラックのもの全て差し上げるとかなんとかいってたら、それが良くて、この国に住めるし大金持ちになってしまった。豪運・・・!
トラックの中の金目のものをオークションで売りさばいた。
残ったのは十年遊んで暮らせる(慎ましやかに暮らせば三十年)金額と、モトラドと、そして銀色の箱三つ。

郊外に家も買って隣近所に挨拶もすませるとフォトは暇になった。どうやら仕事がしたいらしい。ワーカホリック。
ソウは銀色の箱を開けさせた。中にはカメラが入っていた。

写真撮影に打ち込んだら、カメラの少ない土地だけあって写真家になれた。
こうして「仕事」も手に入った。

・・・うひゃあ。鷲頭様も驚くほどの豪運。決して奇跡といえるほどの運ではない辺りが良い。
馬鹿で正直でも運がよければ生きていけるのだ。こういうキャラクターもいいね。保護者的モトラドのソウがいたことが一番の幸運か。
孤児→奴隷→死にぞこない→放浪者→金持ち→カメラマン・・・社会階級を突き抜けて何も無い(むしろマイナス)ところから有閑階級にまで上り詰めた。今後もやっかいな性格してるので波乱がありそう。政治家になるとか?

この国にキノとかシズとか訪れるかな?結構住みよい国だからシズも気に入りそうだけど、でも住みついたら終わりなんだよなシズは。
主要キャラ感の交流、キノの旅では少ないからなあ。そんなホイホイ会うのもリアリズムが無いけど。けっこうリアルさ重視の作品だからねえ。

キノも砂漠のギリギリのところで雨が降るぐらいの運を見せたことがあったが、はてさて。主人公補正といえばそうかも。

「この世界」についてモトラド・ソウの言及があった。喋るモトラドや飛ぶバイクといった近未来的な国もあれば、ほとんど狩猟生活といった国もある。はてさて「この世界の謎」が解き明かされる日が来るのだろうか。


第五話
「ジャーナリストの国」-How to Be a Liar-
挿絵は銃のターゲット(的)に刺さったペン(万年筆?)。

キノ主観。
キノという、この小説の主人公と同じ名前の、背丈も性別も違うが茶色いコートと言う共通点を持った人物の話がこの国では広まっているらしい。
どうやら殺人鬼として知られているよう。
あるジャーナリストの著作が原因らしい。
そこで・・・

キノ(一人目)関連の話。かなり甘い性格だったみたいだけど足跡があった。悪い形になっていたが。
キノ(主人公)にとってやはりキノ(一人目)は命の恩人であるという話。名誉問題。

茶色いコートは冬専用らしい。当たり前。


第六話
「犯人のいる国」-He Had Done It.-
挿絵は三面鏡に写る男。

キノ主観。国の中で殺人鬼に出会う話。
今回はまさかのアリバイトリック。キノらしい形になっていて斬新であった。

「森の人」を一時的に奪われる。やはり愛着があるようだ。
持ってる武器の数で時系列が曖昧にわかるのよね。ライフル持ってたりカノンだけだったり。ナイフ型銃はナイフに紛れ込ませてるだろうけど・・・


エピローグ
「戦って死ぬということ・a」-Orger!・a-
挿絵はバギーに乗っているシズと陸とティー。

資源を巡っての戦乱の国々を回っているようだ。もっとマシな所探せばいいのに。
その中で少年兵の宿営地を見つける。

30代の正規の軍人がそれを統率している。シズに特攻をしかけた少年兵を銃殺にした。
少年兵はこの軍人に絶対忠誠しているようだ。

少年兵は敵国の資源採掘村から連れてきた者で、10代の少年に薬によって偽の記憶を植えつけているらしい。
薬は15年から20年で切れるといわれているが、その前に少年兵は死ぬので問題にならないらしい。

聞いたティーはそろそろだろ?と言う。
少年兵と軍人は目が同じであった。つまり・・・

中々よく出来た話。薬が20年で切れるというのもおかしな話のような気もするけど、それはしかたないか。
自分が加害者だと思っていたら被害者だった。自分が正しいと思っていたことは?自分が何者なのか。意識することは稀なのかもしれない。
哀れな話ではある。


あとがき
「おしながき」-Preface-

これまで出てきたキノの旅の料理をレストランのメニュー風に。
船の国の魚のカルパッチョからドクダミ茶、かき氷まで。メニュー解説も馬鹿馬鹿しくて好き。
食事描写上手いよね時雨沢先生。美味い物食ってんのかなあ。


黒星紅白先生のあとがき

フォト描いてんじゃねーか。ネタバレもいいところ。いや、これがあの奴隷少女とは断言はできなかったけど、学園キノ5巻読んでたら、ねぇ。
まあでも逆に期待が高まったけど。これがあるからこそ第一話のトラック詐欺が生きる?奴隷少女また出るとは本気で思ってはいなかったし。




全体としての感想。
奴隷ちゃん再登場!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!いや名前フォトになったけど。
いやー期待してたけどどうせでねえかなあと思ってた。思えば毒草食って死ぬ話も結構前のリサイクル?だったな。フォトは何巻かおきに出てくるのかも。

今回★の挿絵が光っていた。特に白い国の風景が凄い。後、表紙も。
今回のキャラバランスは、キノ主観5話(イラストノベル含む)。シズ主観約一話(前後編)。師匠主観一話(割と長い)。フォト(というかソウ)主観一話。キノシズ師匠全員出るのがイラストノベルに一話とバランスがいい。結構考えられている。

話の内容としても面白いものが多かった印象。あんまり説教臭い現実に絡んだ話がなかったというか。ここにきて時雨沢先生もまだ成長している?流石。なんというか文章力があるよね。文章力って言葉も酷く曖昧だけどさ。

15巻。一年に一回のペースの刊行だが、それが故にネタもたまってクオリティが高い作品が書けるのだろうか。
15巻はいつもに増して良かった。短編集だし、どこから読んでもいいような書き方がなされている。
キノの旅を読んだことの無い人にもオススメ出来る内容であった。







電撃の缶詰読んだけど、紅玉いづき、角川つばさ文庫で書き下ろし作品書いてるのか・・・読もうかなあ。
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テーマ:読書 - ジャンル:サブカル

  1. 2011/10/09(日) 02:01:28|
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  3. | コメント:2
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コメント

No title

ナイフ型の銃はもう前の話で出てきている。
何巻かは自分でお探しください。
  1. 2011/10/10(月) 17:55:54 |
  2. URL |
  3. 通りすがり #.NKcjBRQ
  4. [ 編集 ]

Re: No title

> ナイフ型の銃はもう前の話で出てきている。
> 何巻かは自分でお探しください。
ええ、書いた後に気付きましたけど(面倒なので修正とかしませんでしたが)、たしか二巻の人を喰った話ですよね。
ということはアレ結構後の話になるんですよねえ。
ライフルみたいに目立たないから少し時系列調査には向きませんが、今後も要所要所で出てきそうです。
  1. 2011/10/10(月) 18:05:44 |
  2. URL |
  3. たていと1 #-
  4. [ 編集 ]

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