ネット世代の雑評論

主にネット上に散らばる各々の事象についての紹介、及び評論

ジャンプの主人公 めだかボックスのネタバレより

今月10日紹介のキノの新刊15巻の表紙。黒星先生やっぱセンスすげえ。それはいいとして背景の小物、これまでの挿絵にあったような。


週刊少年ジャンプ。日本最大の漫画雑誌である。週刊少年ジャンプは漫画界の中心的役割を果たしている。漫画と聞いて思い浮かべるべきは週刊少年ジャンプの漫画なのだ。

週刊少年ジャンプは、実は様式美に拘る漫画雑誌でもある。
友情・努力・勝利の三原則は有名だろう。
これに基づく展開をする漫画は多く、そうでなくても意識はされる重要な原則である。


めだかボックス。ライトノベル界の生ける伝説たる西尾維新の原作の週刊少年ジャンプ連載中の漫画作品。元々西尾先生は漫画が好きで漫画家志望で、絵が上達しなかったから小説家になったらしい。特にジョジョが好きだとか。
漫画を読んできた人間の漫画作品。それゆえかめだかボックスにはメタ的視点が数多く存在する。


というわけで明日公式発売日のめだかボックス。その中で現在の敵役と思しき「安心院なじみ」が主人公側の脇役である「人吉善吉」を主人公「黒神めだか」と戦わせるために誘惑しようとしている。
安心院曰く、黒神めだかは主人公であるが故勝てない。ならば人吉善吉を主人公としてしまおう。
非常にメタ的でアレだが、まあそういう訳でその説得にジャンプの主人公の名前を上げている。


そのネタバレ情報を入手したので今回はそれを見ていこう。
長い前置きだった。

引用
地球育ちのサイヤ人孫悟空のように強く
宇宙海賊コブラのようにダンディで
シティーハンター冴羽りょうのように頼り甲斐があり
北斗神拳伝承者ケンシロウのように愛に生き
天才バスケットマン桜木花道のように努力家で
テニスの王子様越前リョーマのように小気味よく
サッカーの申し子大空翼のように爽やかで
セクシーコマンドー部部長花中島マサルのように剽軽で
電影少女の再生者弄内洋太のようにピュアで
現代の本因坊秀策進藤ヒカルのように懸命で
表裏一体の決闘者武藤遊戯のように伝説となり
帝拳高校の番長前田大尊のように仲間思いで
男塾総代剣桃太郎のように漢気に満ち
ジョースター家の末裔空条承太郎のようにクールで
霊界探偵浦飯幽助のように型破りで
小さな勇者ダイのように勇気を持ち
崑崙山一の策士太公望のように機転が利き
正義超人キン肉マンのように友情に厚く
青銅聖闘士ペガサス星矢のように熱血で
人斬り抜刀斎緋村剣心のように優しく
大ふへん者前田慶次のように傾く

全体を見ると80~90年代の主人公が多い。一番新しいのでテニスの王子様、越前リョーマだろうか。
まあ西尾先生がジャンプ読んでたときも90年代だったろうし、ジャンプの黄金期とも呼ばれる時期だし、あんま新しいのだして他の作品に干渉するのも面倒だし、安心院なじみはジャンプを卒業しているという設定もあるし全体的に妥当か。

一つ一つ見ていこう。これによってジャンプの主人公像、少なくとも西尾維新が思う、めだかボックスでのそれがわかるかもしれない。

地球育ちのサイヤ人孫悟空のように強く

孫悟空が主人公を張る漫画はドラゴンボール。週刊少年ジャンプ連載の漫画ではもっとも有名か。
孫悟空と言う名は中国の小説西遊記の孫悟空からとったものであるが、世界観としてはSFに入るだろうか。
孫悟空は常に勝つわけではないが、強くなっていく、バトルに勝つという要素はこの漫画の中心的概念である。パワーインフレの彼方までいったそれを象徴する言葉は確かに「強く」だろう。強くなければ主人公とはいえないか?ジャンプではそうだろう。

宇宙海賊コブラのようにダンディで

主人公名がそのまま漫画の名前と言うタイプ。どちらかと言うと80年代?
世界観としては完全にSF。スペースオペラ?
ジャンプと海賊ってなんかあるのかね。ジャンプのマークは海賊マークだし、今のジャンプの大看板は海賊の話のワンピースだし。
「正統派の宇宙海賊」、要するに義賊。ねずみ小僧のようなアレ。
ダンディ、色々ややっこしい定義が乱立する言葉だが、美学に生きるぐらいの意味ならばまさに一匹狼の宇宙海賊コブラはそうであり、ジャンプの主人公とて人生の指針ぐらい無くては勤まらない。

シティーハンター冴羽りょうのように頼り甲斐があり

シティハンターはハードボイルドな漫画作品。
世界観は現代(80年代)。
ハードボイルドとは、Wikipediaより引用すると、

引用
ハードボイルド(英語:hardboiled)は、感傷や恐怖などの感情に流されない、冷酷非情、精神的肉体的に強靭、妥協しないなどの人間の性格を表す言葉である。

そのような作品の主人公は確かに頼り甲斐がある。
めだかボックスでは主人公と敵の関係を「勝ち組負け組」の関係とダブらせているところがある。勧善懲悪と言う概念が通用しなくなった時代の漫画としてはそれをメタ視点で見ることが必然と言う事か。そういう意味で90年代の主人公はポジティブでマッチョな性格の持ち主が多かったのかもしれない。

北斗神拳伝承者ケンシロウのように愛に生き

北斗の拳は世紀末を生きる人々の愛と悲しみの物語。
北斗神拳の象徴は愛。最も愛が深い男こそ最強で、主人公。

天才バスケットマン桜木花道のように努力家で

スラムダンクは青春をバスケットボールに捧げた男達の話。
なるほどジャンプの漫画作品の主人公はなにやら特別な才能や血筋を持つものが多い。桜木も大きな才能を持つ天才。
しかしその天才をも超える強さがいる。努力無くして主人公の座は守れないのだ。

テニスの王子様越前リョーマのように小気味よく

漫画タイトル「テニスの王子様」とは主人公、越前リョーマの事。
さして努力家と言う印象も無く、そもそも主人公のライバルキャラとしてデザインされたキャラという話もある。
しかしその活躍はまさに主人公。90年代も終わりに連載が始まった作品として「普通の」主人公とは言えないが、やはりそのスター性は主人公。

サッカーの申し子大空翼のように爽やかで

キャプテン翼はサッカー漫画。世界各国で親しまれているその影響は凄まじい。
スポーツマンシップに則ったスポーツマンの鏡である翼は、全く卑怯さや負の要素が見当たらず、爽やかな印象を与える。

セクシーコマンドー部部長花中島マサル

「セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん」。ギャグ漫画として例外的にこの台詞の羅列の中に入っている。それほど特別と言う事。まあ筋肉マンも初期はギャグ漫画だったし、今もまあアレだけど。
剽軽。おどけている、こっけいな事。笑いは人間の知性の象徴。人を笑わせる明るさこそ主人公の性格として重要なものかもしれない。

電影少女の再生者弄内洋太のようにピュアで

電影少女はSF恋愛と言うジャンル。現代の少年の思春期の精神を描くには良いジャンルかもしれない。リアルを追い求めた作品世界。
リアルに生きる人間、ピュアな精神。相反するからこそ光り輝く。希少性は主人公的であり、周りに影響されない事は主人公の本質に関わる。

現代の本因坊秀策進藤ヒカルのように懸命で

ヒカルの碁は少年誌では中々テーマとなりそうにない囲碁の漫画。
勝負の世界は懸命に生きなければならない。その特別な懸命さこそが読者に愛される主人公性というものだ。

表裏一体の決闘者武藤遊戯のように伝説となり

遊戯王は「ゲーム」を扱う漫画。ゲームといっても電子ゲームというよりも卓上ゲームといった趣である。
勝利に勝利を重ね、名を上げてゆき、最後には伝説となる。立身出世の妖怪変化。勝利の行き着く果てがそれだ。

帝拳高校の番長前田大尊のように仲間思いで

ろくでなしBLUESは学園不良バトル漫画。
不良、その言葉をつけた「大人」達の思想とは逆を行くからこそ皮肉的な、冷笑的な、軽蔑的な言葉である。
つまり今の大人たち、資本主義に生きる大人が忘れた熱い人間味に溢れるのが理想的な「不良」と言う事だろう。
仲間思い、人間的な感情で非常に正の印象が強い。ある種アウトローな主人公が持つべき素養はこれだろう。番長、その中でリーダー的存在ならばなおさらだ。

男塾総代剣桃太郎のように漢気に満ち

魁!!男塾は「男」と言う概念、性別的意味を超えたその生き様を描いたバトル漫画である。
男らしさとは何ぞや、言葉にしにくいものこそ漫画の主人公が身を持って実践しなければならない。

ジョースター家の末裔空条承太郎のようにクールで

ジョジョの奇妙な冒険は現在8部作で今も継続中の、戦う人間を描く作品。
ジョジョの奇妙な冒険は部が変わるごとに主人公も変わる。ジャンプ黄金期を支え、最も知名度が高い、後々の「能力物」に多大なる影響を与えた第三部の主人公、空条承太郎は奇想天外な能力を持つスタンド使い達により窮地に陥れられても冷静に、慌てずに、クールに、逆転して勝利してしまう。
頭脳戦が主体となる今日の能力物バトル漫画では必須の才能。

霊界探偵浦飯幽助のように型破りで

幽遊白書は霊や妖怪の跋扈する現代日本で戦う浦飯幽助とその仲間達の話。
型に縛られた人間は決して主人公にはなりえない。それが主人公と言う型?矛盾に満ちた話だがそういう定義をしないとならないものは多い。ロックと商業ロックみたいな?

小さな勇者ダイのように勇気を持ち

ダイの大冒険は名作ゲーム、ドラゴンクエストの世界観を持つファンタジー、剣と魔法の物語である。
勇者。ファンタジーの勇者は主人公。その言葉の意味は勇気を持つもの。友情努力勝利の三法則とは直接関係無いが、やはりこれも重要な、根本的な主人公の資質。魔王、ラスボスに勝つのは勇者、主人公。

崑崙山一の策士太公望のように機転が利き

封神演義は独特の世界観を持つ作品。
主人公である太公望は頭脳戦を得意とする策士。勝つためには卑怯な戦法も意に介さない。それはそもそもの人間性の描写があってこそ為し得る。勝つためには肉体の強さだけでは不十分なのだ。

正義超人キン肉マンのように友情に厚く

キン肉マンはプロレスをモチーフとした、友情努力勝利を具現化したようなバトル漫画。
「正義超人」と呼ばれるだけあってその本質は非常に正の印象を与える。週刊少年ジャンプの主人公には中々鬱屈とした人間はいない。

青銅聖闘士ペガサス星矢のように熱血で

聖闘士星矢は一世を風靡した、聖衣と呼ばれる特殊な鎧を着て戦う一風変わったバトル漫画。
非常にバリエーションの多いキャラクターだが、主人公は熱血とそれほど外していない。ジャンプ主人公は異常ではいけないと言う事?

人斬り抜刀斎緋村剣心のように優しく

るろうに剣心は明治時代に生きる幕末の侍達の話。
稀代の人殺しとして名を馳せた人斬り抜刀斎は誰よりも優しい人間であった。
戦うには優しさは不必要?しかし優しくなくては戦ってはいけない。優しさは癒しのみに必要な概念ではない。人の痛みがわかってこそ人を傷つける権利が多少なりとも生まれるのか。

大ふへん者前田慶次のように傾く

花の慶次は歴史物の漫画作品。
戦国の世を生きた傾奇者、前田慶次を描いた作品。
「傾く」、戦国時代に生まれた概念で、中々複雑で説明が難しいので各自ググッて欲しいが、簡潔にいうと派手好きで常識はずれ、自由に生きる様といったところだろうか。
やはり世間に迎合するのは週刊少年ジャンプの主人公とは言えない。そういうことだろう。




ここまで見て、週刊少年ジャンプの「主人公」というものの本質が見えてきた感がある。
非常に人間的で、感情のままに生き、仲間に慕われ、勝つために必要な何かを持っている。
捻って見ると負の要素が無く、人間的弱みが少なく、最終的に勝った側に位置している。
週刊少年ジャンプは敗北者の物語ではないのだ。そのための友情努力勝利の原則。ハッピーエンドこそ大衆の求めるもの。

もちろん、これはめだかボックスにて安心院なじみが、西尾先生が選んだそれで実際はどうと言う話では無い。
だが実際そういう性質があり、週刊少年ジャンプは漫画の中心であるから漫画全体の傾向ともいえる。

漫画には絵がある。絵は非常に説明的で印象的だ。それ故陰鬱な雰囲気で動かすには少し難しいところがあるのかもしれない。
そういう漫画を切ってこそのジャンプの繁栄ということかもしれない。

主人公はその作品の登場人物の中で最も重要である。
現在の所謂サブカルチャーはキャラクター文化である。
主人公の為す意味は恐ろしい大きさである。それを踏まえて見る側も作る側も邁進すべきだ。


ジャンプの主人公にあなたはなれるだろうか。その誘惑を描いた来週以降のめだかボックスに注目である。あと黒子のバスケも。アレ面白いし、めだかと一緒にアニメ化決定したし。
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テーマ:読書 - ジャンル:サブカル

  1. 2011/10/02(日) 21:44:54|
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