ネット世代の雑評論

主にネット上に散らばる各々の事象についての紹介、及び評論

メグとセロンⅥ第四上級学校な日々 感想

電撃文庫の新刊
著者 時雨沢恵一
イラスト 黒星紅白
メグとセロンⅥ 第四上級学校な日々

の感想。ISBNも書いたほうがいい?いやいや。
ネタバレ注意ね。



まずは挿絵から。
やっぱ黒星先生パネェっす。・・・これは感想なのか。感想ではあるか。

登場人物の微妙な感情をうまく表現できているというか、小説内容をうまく反映してる。
主人公だけに全ての挿絵に(タイトルとかにも)メグミカとセロンが載ってるんだけど、セロンは無表情なのにメグミカを意識してるのがよくわかったり、メグミカの天真爛漫さも凄かったり、他のメンバーもキャラクターの微妙な機微を丁寧に描かれている。
座り方一つとっても全然違ってくる。
意識してみるとやっぱ★すげー。


じゃあ次は第一話「リィナとクルト」の感想。

この掌編は、メグミカとセロン、それぞれの弟と妹であるリィナとクルトの電話口での会話を書いている。
その会話を通じて二人のキャラクターを知れるだけでなく、本編の主要キャラクター6人の説明も兼ねていると言う上手い構成になっている。
しかも面白い。

6人のメインキャラクターが物語中の人物にどう評価されているかという事を書くことで、多少主観的に捉えられたキャラクター像をもう一度客観的に書く。
6巻から買う人は、まあそんなにはいないかも知れないがたまにはいる。そういう人のためにも素晴らしい。結構前提を前提として分かってて当然のように書く人もいるけど、まあわからない人はわからないからね。積み重ねは必ずしもよい方向に働くとは限らない。
その点時雨沢先生は気配りが効く。その辺が非ライトノベル的ではあるわけだが。

あるいはメグとセロンが終わったらこの二人が主人公の話書くとかあるかも。
終わるまでにリリアとかトレイズも新聞部に深く関わるのだろうか。


第二話「顧問」の感想。

ニックの掘り下げと環境設定の更新とか。
ニック主観で書くことでまた違った日常が描かれる。それと同時に余り深くかかれなかったニックの性格的掘り下げ、どういったキャラであるかも書く。視点を変えることで見えることは多いのだ。

で、新聞部に1巻の「敵」、マーク・マードックが顧問として付く事になった。
しかし、犯罪を犯しても、奇怪な事件を起こしてもそれには何かしらの理由がある。彼もまた一人の人間なのである。
顧問がつくことは新聞部が正式に部と認められることを意味する。
時雨沢先生らしい、論理と倫理で考えさせる掌編であった。


第三話「どこへ行こうと、あなたはそこにいる」の感想。

部対抗オリエンテーリング大会の様子を書くという非常に部活動物のストーリーらしいストーリー。
まあルール上問題ないからといって森とか突っ切る方のオリエンテーリングしだすのはほんのちょっとずれてるけど。

靴がどうとか荷物がどうとかコンパスと地図が何だとかガチっぽい事並べる辺りは時雨沢先生の味。
周りに回してもらわないとメグミカと同じ組にすらなれないセロンのシャイっぷりはいつ見ても笑える。
他のメンバーも特徴的な行動をとり、キャラがちゃんと立ってる事がわかる。
セロンは割とメグミカにちゃんと会話出来ている辺り成長している?遅々とした成長だが確実な一歩。

スキー部も中々楽しい連中。
主将のウィルキンソンを初めとして、女子部員もいたりして結構楽しげ。
ウィルキンソンの体育会系らしい性格も好印象。
百科事典大量に背負ってたりと、一短編のキャラクターとしては惜しいほど濃いキャラ。
今後の登場に期待したい。

ジェニーの語る人間ドラマも考えさせる面白く後味も悪くない設定。設定はいつか書かねばならぬが、上手い出し方。設定資料集なんか買うのを期待していてはアレだ。まあ私は設定資料集の類は好きだが。

まったりとした前半から、スキー部とのデッドヒート。
全体的にほんわかとした空気が一気に研ぎ澄まされる。まあこの巻唯一の緊張感溢れるシーンなわけだけど。
体力的に劣る新聞部がスキー部に勝つにはどうすればいいか。ここでメグミカが大活躍。意外さにも正統派、王道があるのだなと認識させられた。
読者の予想を裏切るのは十八番?期待は裏切らないのが良い。

最終的に一位になった訳だが、ラリー、セロン、メグミカが三者三様のやり方で勝利に貢献した辺りが清々しくて読み味が良い。
面白いという事よりも重要な事があるのか。まあ面白いという事だけが小説を評価する項目ではない事は確かだろう。
最終的な意味合いとしてセロンとメグミカの仲が良くなっているというのも軸がぶれていなくて好ましい。


第四話「我々は新聞部だ」の感想。

非常に冒険的な構成をとっている。
主格は、田舎の学校からの留学生、「あなた」だ。
「あなたは~」といった風に常に主格が強調される。

恐らくは、このキャラクターを読者に共感させるための試みだろう。男性とも女性とも取れる描写とかで顕著。
ただ単純に新聞部の日常を書いていくのに抵抗を感じての措置かも知れない。

「あなた」としているのに超優等生としているのはどうかと思うが、まあ悪い奴より全然いいし、設定上仕方ない点もあったのだろう。

そして第二話と同じく主観が変わっている事も重要だ。田舎からの留学生という立場から見た、舞台の感想を書くのに内容の多くを費やしている。
更に、しつこいようだがまたその主観からの新聞部メンバーの紹介が入る。結構深いところまで入った説明である。始めてメグとセロンを読む人が第三話を見てからここを読むと考えると面白いやり方。意識してやっている?
旧シリーズのキャラの再登場もファンには嬉しいサービス。

主観の違いによってどれだけ印象が変わるかというのを見比べるのも面白い。
特に最後のほうの種明かしはあからさまである。

最後といえば、最後の最後に話が展開。こうまで書かれると続きが凄い気になる。でも時雨沢先生、筆が早いとは間違ってもいえないし、4シリーズ持ってるからまた1年後か・・・
スゲー続き読みたい。


第1話から第4話までの感想。

今回は、新聞部自体をテーマにとった内向きの話題で進行した。
それ故キャラの掘り下げ、再紹介、新展開と濃度の濃いながら読みやすい内容であった。

世界観設定の掘り下げも多かった。
すでに旧シリーズも含めて十何巻も出ているが、決してファンタジーではないながら、物語の核として使える程度に異質な世界観。余り説明しすぎると墓穴を掘るが、ここまでシリーズが伸びればある程度説明するのは良い事だろう。
近現代という文化設定も、作者が得意なのだろうが他の作品では余り多く見ない独自性を持つ。こういう点は強みとなる。
世界観設定は重要だ。ただ世界観を垂れ流してもそれだけで魅力を出すのは難しい。要所要所で的確に、読者にフェアに出していく。時雨沢先生は上手い。


あとがき特別企画掌編「セグとメロン」の感想。

あとがき作家らしい、何故か掌編を書いているあとがき。
本格的に馬鹿馬鹿しくて笑える。
まあギャグ。これをあとがきといって書く辺り末期的。
黒星紅白もあとがきを書く(描く)のが常態化している辺り更に末期。漫画版学園キノでも両方が書いてたし。


全体の感想

読者の存在を考えて書かれていて中々面白い。
始めて読む読者にもわかりやすく、ディープでコアな読者の期待にもこたえる。
第四話の主人公を「あなた」としてみたり、その「あなた」に物語を進行させたりと遊び心もたくさんある。

私は小説の本質というものがわかるわけではないが、時雨沢恵一は"本物の小説家"だと思った。






まあこんなところ。
自分で感想を流し読みしたけどキザな文体だなあ。自分が読むからそう思えるのかもしれないが。
やっぱ感想は発売日に書いたほうがいいのかなあ。


あ、全く関係ないけど最近の原発関連でわかりやすい説明があったのでリンクしておく。
放射線関係は説明が難しいのよね。流石に東大の教授だけあってかわかりやすい説明。
情報というのは正しい情報を受け取っても受け取り手が理解しないとダメなんだよねえ。

学者は研究する人で説明する人ではないというのも重要。万が一にも間違った説明は出来ないし、専門用語を使うのに馴れすぎているし、「一般人」がどれほどそれについて知っているかも知らない場合も多い。大変だよ。
それを専門の記者が「翻訳」すべきなんだけども・・・
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テーマ:読書 - ジャンル:サブカル

  1. 2011/03/13(日) 23:54:22|
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