ネット世代の雑評論

主にネット上に散らばる各々の事象についての紹介、及び評論

ハンプトン・ローズ海戦、世界初の装甲艦同士の戦い、のドラマ性について

ハンプトン・ローズ海戦
モニター (装甲艦)
バージニア (装甲艦)
Wikipediaより

年3回刊とかいう珍しい漫画雑誌「楽園」でいつもマニアックな軍艦の蘊蓄漫画を描いてる黒井緑先生が出した単行本「軍艦春日回航記」を読んでいた。
まあマニアックで少々話が密すぎるきらいもあるが中々面白く読める。一話一話の短編集の形を取っており表題作である軍艦春日回航記では日露戦争の趨勢を決めた日本海海戦に参加した軍艦春日がどのようなすったもんだを経由して日本に辿り着いたかを描いている。国際的な船、という揶揄は笑える。

で、この本の最初に載っているのが「ハンプトン・ローズの決闘」。アメリカ南北戦争における海戦であり、南軍が北軍によるメキシコ湾の封鎖を破ろうとして発生したものである。
この海戦には多くの軍艦が参加した。にも拘らずこうも呼ばれる。「モニターとメリマックの戦い」。装甲艦、厚く装甲で覆った軍艦が非装甲艦に対して圧倒的な有利を保つことが証明され、なおかつ二つの装甲艦が初めてぶつかった海戦であった。そこにあったのはただ二つの船による意地の張り合い。決闘と称しても間違いはない。

軍艦バージニアは北軍が撤退時に喫水より上を燃やして残した軍艦メリマックを南軍が鹵獲し、大改造を経て装甲艦に仕立て上げた代物である。改造したついでにバージニアと改称したが勝者が歴史を作るので今もメリマックと呼ばれることが多い。
大きな特徴としてはピラミッドのように角度を取った装甲と時代錯誤ともとれる衝角(体当たり用の装備)である。角度を取った装甲は敵艦の砲撃を滑らせ反らす。現代の戦車もそのような装甲の設計になっているものは多い。衝角は北軍が装甲艦を作っているという情報から追加された。

軍艦モニター。設計は復水器やホットエアエンジンなども発明した発明家兼エンジニアのジョン・エリクソン。まさにモニター、監視する者、指導者という名前にそぐわずこれ以降の軍艦(あるいは潜水艦すらも)の土台となりうる先駆的な設計であった。
特徴は多いが極めて頑丈な、チーズ缶と呼ばれる砲台を除いてほとんど喫水より下に沈んでいるのが面白い。これが原因で外洋航行には向かずこの船自体も沈むのだが、河川防御などには合致し似たような設計のモニター艦というジャンルが産まれた。


ハンプトン・ローズ海戦では一日目はモニターが到着しておらずバージニアの独壇場である。北軍の軍艦カンバーランドはバージニアの衝角攻撃により沈没し、他の軍艦もバージニアの装甲に歯が立たず次々撃破されていく。
二日目にモニターが到着し、決闘が始まる。バージニアの砲撃はモニターに目立ったダメージを与えられないが内部の乗員にけがを負わすことが出来たし砲台の二つある門扉の内一つを故障させることまでは出来た。モニターの砲撃はバージニアの装甲にひびを入れることは出来たが決定的な損害は与えられない。やむを得ずバージニアが体当たり攻撃(衝角はカンバーランド攻撃時に脱落しているが)を行うが船速で勝るモニターはこれを回避。モニターは至近距離での砲撃を行うがバージニアは防ぎきる。
一時間の戦闘の末膠着状態に陥った挙句、バージニアは潮の下げによる座礁を嫌い帰投。戦術的には引き分けに終わるが戦略的には北軍が湾の封鎖の維持に成功し勝利を得た。


もう、たまらんよね。これほどのドラマが現実にあるから困る。
共に新規技術を用いた兵器がぶつかり合い、それが故に膠着し、ほんとうにギリギリのところで勝敗が決まる。
そしてそれが戦争の帰趨だけでなく今後の技術史に繋がっていくという。



21世紀も1/5ぐらいいったが、最近は技術の進歩は、いくつかの界隈、例えばITなどでは見られるが飛躍的な革新が日々行われるような時代は過ぎ去った感がある。
技術の違いが命運を分ける。そういったドラマが現実だった日がある。今後もそういった日がこないものだろうか。
宇宙SFが最近多くないのはやはり宇宙開発が大衆の思ったように進まないからだろう。技術は思うだけでは進まないが思わぬ方向には進んでしまうものなのかもしれない。
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テーマ:雑記 - ジャンル:サブカル

  1. 2020/04/15(水) 00:10:51|
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