ネット世代の雑評論

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Wikipedia探訪「南極星」

南極星 - Wikipedia
北極星 - Wikipedia
ポラリス (恒星) - Wikipedia
はちぶんぎ座シグマ星 - Wikipedia
りゅうこつ座ベータ星 - Wikipedia



南極星。そんな星はない。天の南極に明るい星はないのだ。

星々の主である北極星の固有名はポラリス、これはラテン語で「極の」という意味。言うまでも無くその性質が名前となった例である。
比較的明るい2等星であり、ポラリスを使って天の北極を知ることが容易にできる。
もっとも、地球の歳差運動により徐々に天の北極は変わっていく。これをギミックとして使ったのが天鏡のアルデラミンという小説だが今回はおいていく。

紀元前11500年頃は一等星(視等級で言うとほぼ0等星だが)のベガが北極星、

紀元前2790年頃は4等星のりゅう座α星、固有名トゥバンが北極星。りゅう座にはもっと明るい星があるのにトゥバンがα、最初なのはメソポタミアの占星術からの伝統だとかなんとか。エジプトのピラミッドが向きを指し示す星もこいつだったとか。トゥバンとはアラビア語で蛇の頭という意味。りゅう座の頭という訳だ。

紀元前1100年頃は2等星、こぐま座ベータ星、固有名コカブが北極星。コカブとはアラビア語で星という意味だが、これは北の星、Al kaukab al shamaliyyからkaukabだけ残ったものであるとか。古代中国では北極五星(太子、帝、庶子、后、北辰)の内、帝であるとされた。古代においてはまさしく星々を従える皇帝であったのだ。

ちなみにポラリス、昔はキノスラなどと呼ばれていた。ギリシア語で犬の尾という意味である。王座に就く前の名といったところだろうか。まあ登場する17世紀~18世紀の天文書の時代ではもう北極星となっていたのだが。もはや忘れ去られた名前である。

このように北極星は、過去にその地位にあった星達すらその足跡を残している。
しかして天の南極の近くにはあまり明るい星も無く、そして南半球には陸塊が少なく東西に広いユーラシア大陸が北半球にあるため、銃・病原菌・鉄にあった理論の通り文明は北半球で発達し、古代南半球の史料は著しく少ない。

一応、3等星、みずへび座ベータ星が紀元前150年頃に南極星であった。しかしてこやつは固有名すらない。
今は赤緯 -77度。3等星としては一番天の南極に近い。

過去の南極星で言えば一等星のエリダヌス座α星、アケルナルが紀元前2800年頃に天の南極から8度の位置にあった。8度はやや微妙だが一等星であるし南極星といってもまあ良かろう。
現在は赤緯 -57度。天の南極からは程遠い。とはいえ北半球の人々には十分馴染み薄いか。アケルナルというと竹本泉の漫画作品「乙女アトラス」で星から名前を取った「あけるな」という青年が出てきたのばかり思い出す。

あえて現在の南極星はどれかと言われればはちぶんぎ座シグマ星、固有名Polaris Australis(ポラリス・アウストラリス、南のポラリス)であろうか。天の南極から1度ほどの位置であるのはよいのだが、問題は視等級5.42、ギリギリ5等星という暗さだろう。6等星まで肉眼で見れるということになっているのだがちょっとこれでは天の南極を知るのには厳しい(星で天の南極を知るならば南十字星を使うやり方が主流)。

とはいえポラリス・アウストラリス、この暗さなのに、ポラリスありきの名前とは言え固有名がある星であり忘れ去られている訳ではなく、ブラジル国旗の中心部に描かれた星図に載っている。あの星図はリオデジャネイロの、南半球から見える空であり、実はアレに描かれた星はアメリカ国旗の星と同じく州であり、州が増えるごとに増やすとかいうメンドクサイ事をしているタイプの国旗なのだが、更に凝り性なことにわざわざ星図にしたのはそれがやりたかったのかそれぞれの星ごとに州が対応しているのだ。ポラリス・アウストラリスは南の極星ということもあろう、なんと首都・ブラジリア連邦直轄区に当てはめられている。やはり南極星もまた星々の大君だという現れだろう。まあ5等星なので星型じゃなくドットみたいになってるが。遷都計画により何もなかったところに作られた首都ブラジリアらしいといえばそうかも知れぬ。ちなみにリオデジャネイロとかでかいところは一等星に割り振られている。
昔、ブラジルの国旗が世界一醜いとか書いてたサイトを見たことがあるがこの実証主義的国旗の真実を知って猛省していただきたい。デザインとしての良悪は知らんけど。

他、天の南極に近い明るい恒星は2等星りゅうこつ座ベータ星、固有名ミアプラキドゥスがある。Miaplacidus、この固有名はやや謎めいており、placidusはラテン語で静かな、という意味だろうがMiaがわからない。アラビア語のmiyāh、水だ、とする説もあるが実際のところわからない。
2等星として天の南極に一番近く赤緯 -70度。これで南極星と呼ぶのは中々厳しい。

全天21の一等星で最も天の南極に近いのはみなみじゅうじ座α星、固有名アクルックスである。赤緯 -63度。南極星というにはやはり遠すぎるが、先述したようにみなみじゅうじ座=南十字星を使う事で天の南極の大体の位置がわかる方法がある。2等星のみなみじゅうじ座γ星、固有名ガクルックスとアクルックスの間隔をアクルックスの方向に4.5倍した点がおおよそ天の南極の位置になる。大航海時代の船乗りはこうして南の方角を計っていた。
アクルックス、ガクルックス。これらの名前は伝統的なモノではない。クルックス=みなみじゅうじ座。アルファクルックスとガンマクルックスの略称が正式名称になった形だ。
みなみじゅうじ座は上記のブラジル含め南半球の5つの国の国旗に描かれている。

全天で二番目に明るい、一等星・視等級-0.74、りゅうこつ座α星カノープスは中国では南極老人星、南極星とも呼ばれる時もあるが、赤緯 -52度で極もなにもない。まあ中国で見える程度の位置という訳だ。
一応、12000年後には地球の歳差運動により南極星となる運命にはある。その時の北極星は再びベガとなっており、ベガは天の北極より4度、カノープスは天の南極より8度と言うことになるようだ。

他にも4等星カメレオン座γ星3等星りゅうこつ座ω星2等星りゅうこつ座ι星アスピディスケ2等星ほ座デルタ星Alsephinaといった星々が地球の歳差運動により南極星となりゆく。

更に未来の話をするならば、太陽を除き現在地球から最も明るく見える恒星、視等級堂々の-1.46、おおいぬ座α星シリウスは遠い将来南極星になる。
シリウスは地球から結構近い位置にあり(明るい理由の一つ)、徐々に接近しているため歳差運動とはまた別に長い時間を掛けて天球上の位置が変わる(固有運動)のだが、西暦66270年には天の南極から1.7度の位置にまで迫る。地球の歳差運動は約25,800年で一周する。つまり2周半ぐらい、北極星、南極星がそのぐらいの周期で変わって行った末にシリウスが王位を簒奪する訳だ。
Wikipediaの歴代の最も明るい恒星の一覧を見るとなんとその辺りの時期の方がもっと明るく見えることになる。西暦6万年に視等級-1.64。シリウス、天狼星、天の狼はその最盛期に南の玉座に座る事になる訳だ。

シリウスは黄道よりも南にある星(赤緯 -16度)だが世界各地で様々な名がつけられ、様々な文化の衣を着せられた。シリウスとはギリシャ語で「焼き焦がすもの」「光り輝くもの」という意味だが古代以前から伝来した名前である可能性も高く、エジプトの神オシリスとの関係性も考えられている。
エジプトではシリウスを使って夏至と豊穣をもたらすナイル川の時機を計る。
ポリネシア人達の文化にも強く残っており、やはり特別な星であると感じさせる。



古代から今まで、我々は星を眺めてロマンを語った。
星がヒトの運命を定めているなどというのは近代科学の発展とともに迷信として退けられたものの、むしろそうなったからこそより天空に浮かぶ文化史に胸をときめかせられる。
それぞれの星は水素だとかヘリウムだとかの塊に過ぎないと言えばそうである。ではあるものの、そこには人が築き上げた歴史があり文化があるのだ。それは宇宙空間を隔てて光年の彼方にあるのではなく、天球上、我々の頭の中にあるものである。
それに感動を覚えるからこそ、重力の鎖を断ち切り真空の海を旅してみたいと思うのだろう。人類の発展には感動が不可欠、そういう話をしたかった。
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テーマ:雑記 - ジャンル:サブカル

  1. 2019/01/10(木) 02:06:16|
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