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面白い書名を紹介する 歴史書編

歴史書一覧 - Wikipedia


この前Twitterで「#美しいと思える小説のタイトル」なるハッシュタグが流行っていた。
そりゃもう美しい小説のタイトルなどいくらでも思いつく、というか、小説のタイトルは小説の文字列の中でも一番目につく顔と言える部分であり、一番練られてしかるべき部分でありそれが故に詩的で、面白く、カッコいい、美しい、そういったそれが多く目につく。
これは人を楽しませるために作られた小説だけに限らない。古代の書物、例えば歴史書の類だって書名は興味深いものが多い。

という訳で今回は世界、日本の歴史書から特筆すべきと思った書名を持つ物を紹介していく。
ではスタート。


春秋

中国の春秋時代の歴史書。凄まじいのは、春秋時代ってこの春秋が扱う時代だからそう名付けられたところ。
春秋時代とは

Wikipedia:春秋時代より引用
中国の時代区分の一つ。紀元前770年、周の幽王が犬戎に殺され洛邑(成周)へ都を移してから、晋が三国(韓、魏、趙)に分裂した紀元前403年までである。


春秋は儒教の最も重要とされる経書の分類、四書五経にも入っている。


元朝秘史

中世モンゴルの歴史書。秘史って自信満々なところがいいよね。元々はモンゴル語で書かれていたがそれは失われて漢字のそれだけ残っている。
チンギス・カンの一代記を中心にその族祖伝承、後継者オゴデイの治世の途中までが書かれている。


われらがタルタル人と呼びたるところのモンゴル人の歴史 (Historia Mongalorum quos nos Tartaros appellamus)

こういうクソ長く回りくどい書名は好感が持てる。
書名からわかる通り、ヨーロッパ側から見たモンゴル史である。ローマ教皇庁からモンゴルに派遣された修道士プラノ・カルピニによって書かれたラテン語の書物である。


シュメール王名表
バビロニア王名表
アッシリア王名表

古代メソポタミアの公式な王権の推移。王名表、King list、まさに王の名を書き連ねた書物だというのがよくわかる。
初期の王の在位期間が43200年間とか21000年間とかなってるのはご愛嬌。


諸使徒と諸王の歴史 (Ta'rīkh al-Rusul wa al-Mulūk)
征服誌(Kitāb al-Futūḥ)
黄金の牧場と宝石の鉱山(Murūj al-Dhahab wa Ma`ādin al-Jawāhir)
諸国家の経験(Tajārib al-Uman wa Ta`āqib al-Himam)
歴史における胸臆の安息と喜悦の表象(Rāḥat al-Ṣudūr va Āyat al-Surūr dar Tārīkh)
尊厳なる国事における尊厳なる命令(al-Avāmir al-`Alā'iyya fī al-Umūr al-al-`Alā'iyya)
世界征服者の歴史 (Tārīkh-i jahān-gushāī)
ヘラート市礼讃における極楽園 (Kitāb-i rauḍāt al-jannāt fī auṣāf-i madīnat al-Harāt)
尊厳なる系譜 (Mu'izz al-ansāb)
ザーヒル王伝抜萃国王美徳記 (Kitāb ḥasan al-manāqib al-muntaza'a min al-sīrat al-Ẓāhirīya)
日々年々の栄光、すなわちスルターン・マンスール王伝 (Tashrīf al-ayyām wa'l-'uṣūr fī sīrat al-sulṭān al-Malik al-Manṣūr)
輝ける星、エジプトとカイロの国王史 (Al-nujūm al-Ẓāhira fī mulūk Miṣr wa'l-Qāhira)
諸王国視察旅行記 (諸都市の諸王国に関する視覚の諸道)(Masālik al-abṣār fī mamālik al-amṣār)
諸預言者・諸王・諸カリフの行状における清浄なる庭園
伝記の伴侶(Ḥabīb al-Siyar)
天文学者長の歴史 (Ta'rīkh-i münejjim-bāshī)

やっぱイスラムはかっこいい書名が多い。なんか諸がゲシュタルト崩壊してきた。


歴史

古代ギリシャ、ヘロドトスの「歴史」。直球ど真ん中の書名。というか英語のhistoryという単語(というかヨーロッパの同語源の単語)はここから来てるんだっけ


ランゴバルド人の起源(Origo Gentis Langobardorum)
カール大帝伝(Vita Caroli Magni)
フランク王国年代記(Annales regni Francorum)
フランクの歴史の書(Liber Historiae Francorum)
メッス原初年代記(Annales Mettenses Priores)
皇帝ルドヴィクスの生涯(Vita Hludovici Imperatoris)

ゲルマン人の歴史書から。流石というかなんというか質実剛健の感がある。


ブリトン人の没落

いきなり没落しとる。


デンマーク人の事績
ヘイムスクリングラ
アイスランド人の書
植民の書

北欧の歴史書もかっこいいよなあ。書ってね。


ベーラ王の匿名の記録者による業績録

ハンガリー。いや原題はGesta Hungarorumで味気ないんだけどね。


原初年代記
上の方で似たようなの出したけどこれはキエフ・ルーシの。

Wikipedia:原初年代記より引用
過ぎし年月の物語(古ルーシ語:Повѣсть времяньныхъ лѣтъ;ウクライナ語:Повість врем'яних літ;ベラルーシ語:Аповесць мінулых часоў;ロシア語:Повесть временных лет)とも。


英語ではPrimary Chronicleとなる。
キリスト教以前の東スラブ人の歴史についての貴重な史料である。書いたのはキリスト教徒だけどね……


旅行記(イブン・バットゥータ)

それだけだと味気ないが、原題は「諸都市の新奇さと旅の驚異に関する観察者たちへの贈り物」、アラビア語でتحفة النظار في غرائب الأمصار وعجائب الأسفار‎ 、アルファベットでtuḥfat al-naẓār fī ġarāʾib al-ʾamṣār wa-ʿaǧāʾib al-ʾasfār,と書く。うーむ。イスラムである。


シリアの稲妻(サラーフ・アッディーン伝)

詩的だよね。コーランばっか読んでるとそうなるのか。


ペルー王国の発見と征服

簡潔にして冷酷で悲劇的。


臣連伴造国造百八十部并公民等本記

長い長い。聖徳太子と蘇我馬子によるもので天皇に対する豪族の奉仕についてのものらしいが散逸している。


藤氏家伝

藤氏、つまり藤原氏の初期の歴史。まあそのまんまではあるのだが。


日本国現報善悪霊異記

いわゆる日本霊異記。まあ歴史書というより説話集であるが。
仏教的な観点が押しつけがましくて良し。


古語拾遺

これもまあ神道の資料って感じではある。


尊卑分脈

正式名称は新編纂図本朝尊卑分脈系譜雑類要集。まあこれも系図集だが。
特に藤原氏や源氏の系図に詳しい。


本朝皇胤紹運録

これは天皇家の系図。足利政権下における北朝正統論に基づき書かれている(現在の見解では南朝が正統ということになる)。


類聚三代格

平安時代の法令集。


大鏡
今鏡
水鏡
増鏡

いわゆる鏡物。成立年代順で「だいこんみずまし」と覚える。だが扱う時代順では水鏡が一番早い時代である。
高齢の老人達の会話、回顧録という形なのが特徴。高い統一性を評価したい。
ちなみに吾妻鏡や後鑑は鏡物ではないが名前だけ踏襲している形である。


神皇正統記

皇位継承を中心とした歴史書で、南朝の正当性を訴えている。
色々あって皇国史観にも繋がる訳だが、この押し押しなタイトルがかっこよすぎたのも影響力の一因ではあるまいか。


大日本史

大。うむ。徳川光圀公が編纂を開始して水戸藩の事業として続けられ明治時代に完成した。日本の歴史書では珍しい紀伝体なのが特徴。
これが水戸学になり、尊王攘夷思想になり、最終的に幕府を打倒したことを考えると光圀なにやってんのという感じはかなりする。まあいわゆる水戸の副将軍として徳川政権下でナンバーワンになれない立場がそうさせたという話もあるが。



とりあえずこんなところで。
書名、タイトル。短いセンテンスだが、だからこそそこに強い詩想が駆け巡る時がある。
歴史書とて誰かが読むもので、それぞれに強い個性を与える書名は読者に強い印象を与え、内容の理解にも影響を与えるものだ。
何か本を書くならば書名には凝った方がいい。シンプルなものも良いものだけどね。ともかく考えることである。
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テーマ:雑記 - ジャンル:サブカル

  1. 2018/05/27(日) 08:06:21|
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