ネット世代の雑評論

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「騎士VS武士」とかいう議論

騎士 - Wikipedia
武士 - Wikipedia


騎士と武士。ナイトとサムライ。西洋と東洋の特徴的で、似通った点も多くある戦士階級。
たまにこの二者に関して次のような疑問・議論が投げつけられる。

「騎士と武士、戦ったらどっちが強いの?」


幼稚にも聞こえるし、答えの無い議論であるが考えていくと中々奥深いことも多い。
まずは騎士と武士、その類似点と相違点から行こう。

類似点から見ていくと、一つ目に思い浮かぶのは封建制社会における戦士階級だという点。
二つ目にそれに関連して、古代社会を打倒して中世という時代区分を作り上げた存在だという点。まあこれは日本側が特に言及してる話であってヨーロッパ人からすると中世という時代区分は西洋独自のものだという事になるのだが。
三つ目は騎士道に武士道といった奇妙な倫理規定があるといったところか。十分な社会的地位を確立したが故の結果であろう。
四つ目は貴族階級においても末端以上の地位に位置づけられたこと。古代からの貴族制度にも食い込んでいる訳だ。最上位は中々だったりするが。
そしてここが重要なところなのだが五つ目。騎兵だという点。そして更に言うならば重騎兵であるという点。もちろんこれも、強力な社会的基盤を持ちえたからこそ軍用馬を保持し高価な武器防具を揃えられた、という訳であるがならば同じような兵科かというとそこに大きな落とし穴がある。

相違点はまあ地理的なところから時代区分など様々に上げられるが、騎士と比較し得る武士として、騎兵としての騎士と武士の違いとなると、意識されにくいことであるが武士とは世界に稀に見る重装弓騎兵であったということであろう。ちなみに銃とか使いだすと武士は言うほど馬とか関係なくなるので騎士とは少し話が違ってくる。せいぜい南北朝時代とかまでの武士の話。

重装弓騎兵。弓騎兵というとまず思い浮かぶのはモンゴル。しかしこれは軽装弓騎兵。特に敵前で後退しながら弓を放つパルティアンショットは有名か。そして彼らの使う弓は取り回しの良い短弓である。もちろん素材や様々な工夫により強力であるが。
イスラムのマルムークは重騎兵であり、弓も使った。しかしメインウェポンとは言い難い。

武士は重装弓騎兵(大鎧がどのくらい重装かという議論はあるが、騎士もプレートアーマーを装備しているとは限らない)、しかもよりにもよって装備しているのは世界でも最大の大きさを誇る弓、和弓。基本的に同じ素材と構造ならでかい方が強い矢を撃てる訳だが、まあそれならなぜ際限なくデカくならなかったかというと当たり前の話だが取り回しに難が産まれるからである。そんな使いにくい長弓をよりにもよって騎射に使うから恐ろしい。狩猟や鎧を着てない人間を射抜くのであればもっと小さな弓で良い。鎧武者同士の戦いを見越している訳だ。
まあ、和弓は上下で長さが違い下が短いため長さのわりには騎乗で撃ちやすいというのはある。持つ場所が振動の谷になる場所なので反動も少ないとか工夫もある。しかしそのおかげでより取り扱いが難しくなっている感はあるが。
武士の大鎧もこの長大な和弓を撃てるように作られている。弓は武士のメインウェポンであった訳である。

あと武士の武器で言うと長柄武器もある。槍や薙刀である。まあ、武士が騎乗して戦う時弓、長柄武器、太刀と全部持っていたかは知らんが、状況において徒歩の部下に武器を替えさせたりしたかもしれん。その辺は騎士も似たようなものか?

そして、刀。馬上で用いるので太刀という事になるが、日本の刀は鉄の品質の問題で昔のものほど良いものが多い。たたら製鉄は劣悪な品質の砂鉄をマシにするばかりである。
それ故、鎌倉武士などが佩用する太刀は戦国時代や江戸時代、それ以降に作られた日本刀などよりも数段完成度の高い武器であり、そうそう容易く折れない。
まああくまで最後の武器ではあるが、容易いものではない。


騎士の武装は時代によって場所によって大きく異なるので一概には言えないが、プレートメイルは意外に動きやすいとも聞く。そりゃ重いし高温多湿な場所じゃマジで死ぬが、馬から降りたとて戦えない訳ではない。そりゃ物にもよるが。
大凡、和弓による矢ぐらいならば当たり所が相当悪くなければ死にはしないのではないか。
ただし体に合わせて作らねばならないオーダーメイドのプレートメイルは非常に高価であることには注意したい。
馬鎧というのもある。重装歩兵の究極系となるとそうなる。が、やはり速度が落ちることは否めない。まさか馬にプレートメイルを全身着用させるわけにもいかないし、無敵とはいかない。
基本的に騎士は飛び道具は使わない。そりゃ、短弓やクロスボウぐらい持てば持てたかもしれないが運用思想的には重装騎兵として突撃力を高める長柄武器、例えば槍やハルバードなどが重視された。長大な馬上槍であるランスは有名か。



で、問題は騎士と武士、戦えばどちらか勝つかという話だが、まず言うまでもない話状況によるし前提条件にもよるしどういう戦いで何をもって勝利とするかとかで全く変わる。

まず時代区分で言うなら、まあ銃持ってる時代ならそっちが勝つみたいな話はやめておくとしてもプレートメイルの登場は14世紀を待たねばならないし、武士だって色々装備など変化がある。

環境であれば、当然高温多湿となる日本でプレートメイルは厳しい訳だし、日本の馬はやや小型だが日本の山がちな地形では有利に働こう。騎士は平地で戦うものである。

遭遇戦なのか会戦なのか。人数はどうなのか。距離は。お互いの事をどれだけ知っているのか。それぞれ多人数だとして全員殺せばいいのか逃げた時点で相手の勝利なのか。それぞれの騎士や武士の技量はどうなのか(同時代だとしてその時代の一般的な技量か最高練度を想定するか)。装備品や馬の維持などに掛かるコストなどを考えるか、考えるとして人数などにそれを比例させるのか。コストを考えるとしてその当時のモノ、その国のモノで考えるのか。

そもそもからして全て考え合わせて「公平な」条件状況を考えたとして歴史考証が正しいとも限らず、結局のところこの議論は暗礁に乗り上げる運命にある。




しかしまあ、それでも色々考えて見よう。
まず、武士がパルティアンショットを使えるか。これが普通に使えるとなれば歴史的に考えて騎士の圧倒的不利である。
実際、平家物語には押し捻りという後方への射撃が描写されているらしいが、全員が全員使えるとも限らない。ここでは使えるとして少数だと考えよう。

で、環境についてだが、公平にやや暑いぐらい時期ぐらいということでいこう。プレートアーマーを着るのが嫌にはなるが死ぬほど暑い訳ではない、より疲労するぐらい。そして全くの平地ではなく、全くの山地とかでもなく、疎らに木々が生い茂る丘ぐらいの発想で行こうか。

時代は、弓騎兵相手にプレートアーマー無しは自殺行為だと考え14世紀の初頭で時代を合わせることにしたい。プレートアーマーが出始めた時機で日本では鎌倉時代の終わり、南北朝時代の始まりぐらいか。

技量についてはプレートアーマーを使えるそれなり以上の上級騎士と相手すると考え、それ相応のエリート武士が相手すると考えたい。という訳で装備品は過不足無いものとする。
人数や従者は同等、まあ100対100ぐらいで従者や徒歩の武士も同等かそれに合したぐらいにいるとしよう。

距離は和弓も届かないであろう2km先からの遭遇戦。お互いの領地の境界線上ぐらいとして敗走した方が負けとする。
騎士は徐々に馬の速度を上げながらの突撃、武士はそれまでにどれほど弓で蹴散らせるか。和弓で騎士のプレートアーマーを射抜けないとしても(これもどのぐらいかわからんが)馬は死ぬだろう。まさか全員馬鎧まで着せているのは珍しいだろう。
これで幾らかは騎士も脱落するだろうが突撃が止まるほどでは無かろう。とはいえ、武士も黙って突撃される訳も無く馬を走らせる訳だ。
こうなると突撃の勢いは減じられ、相対速度的に言うほど変わらないぐらいで長柄武器やロングソードや太刀による馬上決戦となるか。
基本的には一対一ならばより重装のプレートアーマーを持つ騎士が有利かもしれない。だがこの時点で数的有利は武士にあるだろう。なら互角?
長柄武器は甲乙つけがたいがあるいは騎士の方が有利か?しかし相対速度が緩やかならば武士の鋭利な武器でもって鎧の隙間を突くことも可能か。
そうなるとなんやかんや馬から落ちた時、やはりなんやかんや重量のあり視界の狭いプレートアーマーを着た騎士は不利か。そこまでいくとプレートアーマーによる疲労も重大になってくる。


やはり、最後まで考えると武士が勝った。まあこんなもん小話でしかないが。
考えていくと、武士の重装弓騎兵というのは中々にすごいものがあるなと思えてくる。
騎士の歴史は銃が完全に普及するまで続いているのでまたそれはそれで違った凄みがある。

重要なのは結果ではなく、それを調べた過程なんだよね。そういう事が想われる議論である。
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テーマ:雑記 - ジャンル:サブカル

  1. 2018/05/16(水) 03:06:42|
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