ネット世代の雑評論

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「世界神話学入門」読んだので感想書く

後藤明 - Wikipedia 著者
比較神話学 - Wikipedia

比較神話学とか、たまに聞くけど良い本無いかなと思っていたが本屋で中々良さそうな新書を見つけたので買って読んだ。
「世界神話学入門」、割と新しい本のようで第一刷は2017年の12月20日発行(買ったのは第三刷2018年1月25日発行の。この短期間で第三刷ってそこそこ売れてるって事かな)で、こういうのは度々学説が流転するのでありがたい。

比較神話学というと、世界中に存在する神話を比べると似たような話ばっかあるなって話を学問してるアレソレである。
最近の学説で言うと、旧石器時代から人類の拡散に伴い神話が作られ、アレンジされながら広がっていった結果であるらしい。
そう。最古の神話は旧石器時代の狩猟採集時代に遡り得るのだ。
これは人類のゲノム解析や考古学的調査、比較言語学などの学説にも裏付けされている。理系文系だと色々区分されるが、人類を足跡を追うのにさまざまな学問が集っているのは面白い。

個別のモチーフで言うと、旧約聖書にもある洪水神話なんぞは世界中どこでも見られる。かつてはキリスト教の伝搬とともに土着の神話と融合したという説明も為されていたが、どうにも関係ない場所でも昔から存在していた。日本神話では海幸山幸神話で山幸彦が海幸彦をマジックアイテムの類で溺れさせたそれが相当するらしい。
話によると洪水神話は最も普遍的な神話モチーフであるいは人類がアフリカから出る以前のパンゲア(パン・ガイア)神話から存在するのではとも言われている。

他にも原初の水や竜退治、四(五)時代制、死の起源や神の死による食物の起源などなど多岐にわたる。
この本で初めて知って面白いと思ったのは、竜退治は例えばヘラクレスがラードーンを倒して黄金の林檎を手に入れただのスサノオがヤマタノオロチを倒してクシナダヒメを手に入れただのシグルズがファフニールを倒して黄金を手に入れただの、やはり普遍的なモチーフであるのだが、竜というのはそもそも脱皮を繰り返して永遠に生きるとされた蛇の化け物という存在である。これが蛇のいない太平洋の島々にいくと竜は現地化されて大ウナギやウツボとなる。それが日本に取り入れられたのが地震を起こす大ナマズということになるらしい。なるほどあいつドラゴンの類だったのか。
 
その神話でも大きく分けると二つの類型があるのがわかる。
アフリカからユーラシア大陸沿岸を渡ってオセアニアや、あるいはベーリング海峡を渡ってアメリカ大陸の南端にまで達した人類の初期移動と関連するゴンドワナ神話。
その後に西アジア文明圏を中核として生み出され、様々な集団によって伝搬されたローラシア神話。
わかりやすいというか、現在よく見られる神話の中核となっているのはローラシア神型神話である。明確なストーリーラインを持つのが特徴的である。逆に言えばゴンドワナ型神話は個々のエピソードが独立している。
ゴンドワナ神話には宇宙の創造だのが欠け、そもそも存在していたように語られる。

まあ結局のところ各地の神話でそれぞれ混ざり合っていたりするものの、それらの類型を見ることも出来る。アフリカの南東部やアボリジニ、インドの非アーリア地域などではかなり純粋な形のゴンドワナ神話が保たれているとか。

ゴンドワナ神話は狩猟採集民族の神話らしく、平等性や罪に対する罰というモチーフが多い。ローラシア神話は階級制のできた農耕民族の神話、というと語弊があるかもしれないが王や貴族の起源などといった話なども多くなる。歴史以前を垣間見ているようで興味深い。


日本神話は、というと相当に混ざり合っている。
言うまでも無く、神の子孫が天皇だというのはローラシア神話らしいところだが、日向三代の神話はかなりゴンドワナ神話の趣が強いようだ。特に死の起源、ニニギがコノハナサクヤヒメを娶りイワナガヒメを追い返したらその子孫は花のように儚い命になったという話はゴンドワナ神話特有のもので、所謂バナナ型神話とも呼ばれる。
日本人はよく縄文人と弥生人だのなんだの言われるが、もっと複雑に人類の移住が為されてきている。大陸に付属する列島という辺りが人類の移住問題を複雑化させるようで、氷河期では海岸線も相当変わるのでその辺が日本神話の奇妙さの一因でもあるのかもしれない。


作者のグループがやってる葦舟だのといったプロジェクトは私がリンクしてるサイトの人からかなり批判されてるようだが、本全体の内容としては非常に面白く読めるものがあった。
他にも色々なことが書かれていたが、そのどれもが興味深いもので、旧石器時代の人類について考えさせるものがあった。

神話は沼だなあ。ポリネシアの神話とかやりだしたらキリがないぞ。比較神話学を真面目にやると頭まで浸かってもう呼吸が出来なくなるな。
モチーフごとに神話がまとめられてるサイトとか本とかないのかな。
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テーマ:読書 - ジャンル:サブカル

  1. 2018/02/24(土) 07:47:11|
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