ネット世代の雑評論

主にネット上に散らばる各々の事象についての紹介、及び評論

「ニワトリ 人類を変えた大いなる鳥」読んだので感想

ニワトリ 人類を変えた大いなる鳥 HONZ

こういうアカデミック寄りな本の感想記事書いても仕方ない気もするが、まあ面白かったので。



ニワトリ、と一言でいうと余り大したものではないように感じる。
確かに主要な食肉の一つではあるが牛や豚と比べてどう優れてるという感じもしない。そりゃ高級品はそれぞれあるが牛の高いのはそれこそビックリするような値段がするしそれに比べるとどうにもぼんやりした印象である。
卵に関しては替えの効かないものではあるが、一応他の鳥、家禽も卵は産む。
チキン野郎だとかコックが英語の俗語で男性器だったりとどうにも振るわない。
しかし、よくよく考えて見るとニワトリというのは様々な側面から重大な動物であるのだ、というのがこの本の内容である。


ニワトリの歴史から特徴、利用のされ方、扱われ方など網羅的な内容で、あえて言えば他の家畜との比較や作者自身のニワトリについての意見や考えというのが薄く画竜点睛を欠く感もあったが概ね満足できる内容であった。中々知らないことも多い。

ニワトリは東南アジアのジャングルに生息するセキショクヤケイ(赤色野鶏)が原種であると考えられている。インドのハイイロヤケイの遺伝子も交雑しているという話だが、ニワトリは普通ハイイロヤケイと交尾しても生殖能力のある子を作れない。セキショクヤケイは家畜化されたニワトリとの交雑による遺伝子汚染による絶滅が危惧されるほどニワトリに近い。
ちなみに家畜化された場所を遺伝子解析によって最初に調べようとしたのは秋篠宮殿下であるらしくこの本にも書いてあった。どうにも日本の皇族というのは学者の家系でもあるらしい。昭和天皇に今上天皇も生物学者で同じような分野だもんね。皇太子殿下は歴史学だっけ。まあ皇族が政治に近寄ると厄介だし当たり障りのない仕事でなおかつ皇居という環境で育まれる感性がそれを助長するといった具合か。

セキショクヤケイはかなり臆病で人に懐かない野生生物であるがこれが家畜化されるに至った経緯は謎である。これと比べればキジやらの方が懐けやすそうだがよっぽど好都合な遺伝子変異でも起きたのだろうか。

人類史のかなり初期(というか史、文書による記録がない時点)にニワトリは家畜化され、ユーラシア大陸のほぼ全土、北アフリカ、ポリネシアの島々、あるいはもしかしたら南米まで広まった。

最初は食用ではなく、例えば観賞用として導入された。なるほど、改めて見てみるとニワトリは、クジャクなどには劣るが中々にド派手な鳥である。赤い鶏冠に色とりどりの羽毛、むき出しの足。他の食用家畜も確かに見栄えがいいものもいるがニワトリは特別そうである。

そして朝を告げる鳥として。これは農村では役に立つ性質である。農村ならばニワトリも喰いっぱぐれないし良好な相性という訳である。

朝を告げるという性質から宗教的なものも含めた様々な象徴にもなった。太陽、癒し、復活。神の使いとしてあがめられたり生贄として使われたりする。
実際、ニワトリは滋養強壮の役に立ち、医療にも用いられる。ギリシャの医療の神アスクレピオスの象徴は蛇の巻き付いた杖であるが生贄にはニワトリを用いたようで、ソクラテスの最後の言葉もそれに関連している。

そういった宗教性を持った儀式から闘鶏が発展した。闘鶏。ニワトリを戦い合わせて勝者を決める。それで賭け事をしたりするアレだがこれもまた全世界的に見られる風習である。はっきり言って野蛮で残酷なので近現代で禁止された国も多いが、ヨーロッパの貴族、インドのバラモンなどの上級階層からタイやインドネシアの百姓までこの娯楽を楽しんでいた。本によるとイギリスの工業化辺りから労働者から時間を奪い階級層を超えた交流を促すため禁止が始まったとかなんとか。

ダーウィンがビーグル号による航海から帰ってきてから少ししてからイギリス王室にアジアの品種、コーチンなどのニワトリが公開社達から送られてきた。ここから品種改良の道が始まっていく。
その家禽の多様さはダーウィンに進化論のインスピレーションを与えた一つの要因である。ダーウィンの鳥といえば絶海の孤島の鳥、ダーウィンフィンチであるが、イギリスで流行して来たニワトリもまた重要なダーウィンの鳥である。

そして新大陸発見とともにアメリカにもニワトリが渡った。
ここでニワトリは食用家禽として進歩を遂げていった。
そもそもアメリカではニワトリは家畜として重要なものと見做されておらず、奇妙なことに黒人奴隷の所有物として認識されていた。奴隷から主人が卵や鶏肉を買うのである。フライドチキンはアフリカ黒人流のニワトリの料理法だという。
その後、様々な品種のニワトリが輸入され、それは女性の収入源ともなり、第一次大戦時では牛肉や豚肉の代替食糧とされ、品種改良が為され、徐々にアメリカでニワトリは重要な家畜となるようになった。
それはある意味ニワトリにとって悲劇である。狭い小部屋に詰め込まれ、くちばしを切り取られ、卵を無理矢理産まされ、あるいは食べられるためだけに生まれ死ぬ。絶滅よりも酷い運命というのは言い得て妙。

近代化された肉の量が多い品種よりも古代から続く品種の方が味が良かったりもする。
それぞれの国でそれぞれの品種が好まれるものである。



ニワトリはこうしてみると牛や豚と比べてもかなり多くの要素がある生物と言えようか。
牛は牛乳を取るためにも使う。農業のためにも使ったりする。豚は大体肉だけか?
小さな家畜だが我々が普段意識する何億倍も重要な生物なのかもしれない。

闘鶏周りは特に知らなかった。なんでニワトリでやるんだと思っていたがそういう具合だったか。ボクシングのバンダム級とかもその辺から来てる。人類の文化の中でも世界中で普遍的。一度見に行きたいな。
あとこうニワトリの話ばかりされると、他の家畜や野鳥、野生生物の肉の味とかも気になってくる。ニワトリでも烏骨鶏とか食ったことないし。現代人は余りにも量産される牛豚鶏肉ばかり食い過ぎている?羊やカモならともかくホロホロ鳥とかでさえ食った記憶がない。魚類なんかはそら寿司とかで色々食うが。

様々な方向に興味が深まる良本であった。
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テーマ:読書 - ジャンル:サブカル

  1. 2017/07/05(水) 23:37:21|
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