ネット世代の雑評論

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「ドラベース」全23巻読んだので感想

ドラベース ドラえもん超野球外伝 - Wikipedia
むぎわらしんたろう - Wikipedia


日本の漫画家を太陽系の天体に例えるならば、日本漫画を大成させた手塚治虫は太陽か。ならば地球は日本に漫画を真に定着させた漫画家コンビ、藤子不二雄に例えられるのではなかろうか


ドラベースは国民的漫画作品「ドラえもん」のスピンオフ作品で、ドラえもんの出身地である22世紀の世界でネコ型ロボットや人間達が野球をするという内容である。

作者はむぎわらしんたろう。ドラえもんの作者、藤子・F・不二雄のチーフアシスタントを務め、今なおドラえもん関連作品に深くかかわっている。
大長編ドラえもん、「のび太のねじ巻き都市冒険記」の制作半ばで藤子・F・不二雄が亡くなり、途中から書き継いだ話は有名か。
その後の大長編ドラえもん(のび太の太陽王伝説まで)も執筆しており、まさに藤子・F・不二雄の右腕たる存在であると言えよう。
昔、コロコロコミックで、「ぼく!ミニドラえもん」を読んで、F先生亡くなったのにおかしいなと思って、よく見れば作者が別人で驚いた記憶がある。まあ実際には驚くって程ではなかったがそれほどまでに画風を寄せているのは流石と言えよう。

むぎわらしんたろうを先ほどの太陽系の天体の例えで言えば、地球の衛星たる月…… はちょっといいすぎなので地球近傍小惑星で最も巨大なガニュメート辺りだろうか。そう言うと細すぎる感もあるが。
ともかく、藤子プロ出身の、弟子筋としては最も直系の一番弟子にあたる漫画家と言えよう。


記事の枕はこのぐらいにして、そろそろ感想に移っていきたいと思うが、野球漫画として非常に熱く、コロコロコミック連載の児童向け作品としてとても読みやすく、ドラえもんのスピンオフとして凄く感慨深い、どこから見ても最高な作品であった。


まず野球漫画として。

一応野球漫画というスポーツ漫画のサブジャンルにも更に下位分類があるのだが、ドラベースは魔球や必殺打法が跳梁跋扈するタイプの野球漫画である。

魔球といえば巨人の星の消える魔球などが有名だが、あれは色々作品内での理論やら種明かしなどで打ち取るという話になる。ドラベースはドラえもん的22世紀なので物凄い無茶な魔球も多い。上下にジグザグに変化するWボールやその派生、及び空中でいったん止まりまた動き出すトンボールなどは読んだことが無い人でも別の何かで耳にしたことはあるかもしれない。ドラベースにおける魔球は種明かしでどうにかするべき謎というよりも、立ちはだかる壁といった趣が強い。理論は説明されないか説明されたところで打てない。ただそれを乗り越える必殺打法でガチンコ勝負といった具合になる。

魔球と必殺打法、その他超プレーでキャラ付けがしっかりなされ、試合、対決の緊張感、濃度は否応なしに上昇する。
野球漫画として特殊な点として22世紀の野球なのでひみつ道具を3つまで使っていいとかどう考えても反則な投法や打法が横行してたりがあるが、むしろそれによって野球漫画として熱いシチュエーションを作り上げている。


児童漫画として。
ドラえもんは児童漫画である。しかし、凡百の子供だましの漫画とは違い大人でも楽しめる。逆に子供ほどくだらない作品には敏感という意見もある。
大人も楽しめる作品と大人向けの作品、それを分け得るのはわかりやすさ、だと思う。

話の流れは概ねとても単純だ。主人公クロえもんとそのチーム、ドラーズ(たまに日本代表とか)が、夢に向かって戦い、悪辣で強力な敵チーム、敵エースを打ち砕く。
それぞれの話に個別のテーマがあり、それを解決するために勝つ。
何の問題もなく味方チームに感情移入できるし、邪悪だった敵も戦い続けるうちにそうなった理由そうせざるを得ない理由がわかり、時には味方となる。
王道を王道として描いている。単調だと批判することも出来ようが、やはり万人向けであり、だからこそ王道をしっかり描けるのは流石と言える。それぞれの話は個性的で実際飽きにくい。

特にシロえもんのライバルキャラとしての完成度は相当なものがある。これはもはやお手本にしてもいいぐらいのレベルであり、その意味でも分かりやすいと言える。


そしてドラえもんのスピンオフとして。
実は、この作品ではわずか2話ほどしか「ドラえもん」自体は出てこない。
あくまで、ドラえもんの、22世紀の世界観で野球をしている漫画である。しかしそれだけだろうか?

そういう訳でもなく、ひみつ道具はドラえもん作中に出てきたものばかりで、野球における面白い使い方が為されている。
また、ドラえもんらしいギャグや雰囲気なども見られ、もちろん絵は藤子F不二雄のチーフアシスタントであるむぎわらしんたろうのそれであり、完全にドラえもんである。
そんな絵で極限まで熱い野球試合をするというギャップもまたスピンオフならではの面白さであろう。

そしてドラえもん自身、出番は少ないが、印象的な役割を持っている。
まずドラえもんは第一話でピッチャーとしてボロクソな投球をしてて、結局のび太の御守りで忙しすぎてチームを抜けた形(籍は残ってるのか知らんが)となる。
その後ほとんど触れられず、友情出演ぐらいの役割なのかなというぐらいでそのまま進行していくが、作品も終わりに近い21巻でドラーズ結成時の回想シーンが挟まれる。その中でドラえもんはドラーズというチーム名を付けている。
よく考えれば、ドラーズにドラと名の付くキャラはいない(~えもんは多いのに)。他のチームではドラ一郎だのがいるのに。まあドラネコの集まりだから、という軽い命名で、実際なんていう事のない話なのだが、一番楽しんでプレイしていたころの回想として、本家ドラえもん主人公たるドラえもんが久しぶりに姿を見せてチーム名決定という後々まで残る仕事をしていたという事実が明かされる展開は感慨深い。その回想がきっかけで試合も、ドラーズが結成当時のように楽しんでプレイできるようになっていくという効果もあり、非常に効果的な演出となっている。

スピンオフとしてはやや異形だが素晴らしい出来となっていることがわかる。



私は正直野球にはそこまで造詣が深い訳ではない。もちろん有名な選手や大まかなルールぐらいは知っているが、そこまで魅力を事細やかに語れるわけではない。
しかしドラベースは野球に詳しくない、素人の私をも大きく感動させるものであった。
本当にいい作品は専門家でなくても楽しめる、などと大言を抜かすつもりはない。専門家にこそ、深く読めば読むほど最高に面白い作品というものもある。
とはいえ、野球を知らずとも楽しめ、野球を知っていても楽しめ、ドラえもんに詳しくてもさらに楽しめる。ドラベースはそういう面でもやはり偉大だと思う。





私はまだ読んでないが続編、第二部にあたる新ドラベースや、その他ドラベース物の読切などもあるようだ。
完結作品と言うのは完成されていてそれはそれで価値があり、またドラベースもまた描き切られているという感もあるが、まだまだ描ける余地はあるのではという感もある。
まあその辺は気長に待ってもいいだろう。あるいはまた何か描かれるかもしれない。未だに優良コンテンツであるのだ。
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テーマ:読書 - ジャンル:サブカル

  1. 2016/04/21(木) 01:33:45|
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