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Wikipedia探訪「仏足石歌」

仏足石歌 - Wikipedia

詩は文字が誕生する以前から存在するといわれている。
それはそれとして、日本の詩、和歌は歴史、つまり文字資料が登場した時点ですでに洗練されたものであった。
現存する日本最古の和歌集は万葉集だが、万葉集の注記を見ると「古歌集」より古い歌集はあったらしい。
ちなみに現存する和歌で最も古い和歌は古事記でスサノオが詠んだ「やくもたつ いづもやへがき つまごみに やへがきつくる そのやへがきを」である。いや、スサノオは日本神話の神で歴史とは言えないが、どの道古事記は日本の文学作品ではおそらく二番目に古い(一番目は聖徳太子の三経義疏(仏教経典の注釈)だがこれは漢文)し、スサノオの和歌は結局古事記に出てくる最初の和歌なので結局一番古いのだ。

とはいえ、大昔は和歌もそこそこバリエーションがあった。
長歌は存在ぐらいは中学校か高校辺りで学ぶだろうか、五、七、五、七、五、七…… と繰り返して最後に五、七、七で締める奴である。第二次大戦後に窪田空穂によってシベリアで死んだ次男を悼んで詠まれた「捕虜の死」が史上最長であるとか。

旋頭歌は五七七、五七七といった感じで、対話形式だったりする。

で、今回のテーマ、仏足石歌体。五七五七七七である。ちょうど短歌の最後に七を加えた具合である。最後の七はひとつ前の七と同じ意味の内容だったりする。
古事記や万葉集、播磨国風土記に一首ずつある。平安時代になると滅びているが、同じ形の和歌が詠まれていることもなくはない。
仏足石歌。なぜこういう名前かというと、薬師寺にある日本最古の仏足石(ブッタの足跡を模った石)と一緒にある歌碑に二十一首まとまって詠まれているからである。

で、まあそれはいい。石に彫られていて、万葉仮名で書かれた最古の国語文であるというのも凄い話である。
しかし、和歌としての評価は、

引用
評価[編集]
「仏足跡歌は、すべて表現が稚拙であるが、それが却って、こういう性質の歌には相応しい風格を与えている。いずれも信仰や道義を説教するという、理屈歌となっていないところがよい。」(藤田徳太郎)[69]。
「内容は詩として見るにはあまりに不熟でもあり、浅薄でもあるが、その不熟浅薄なところに、当代人の思想の程度が伺われるわけである。」(鈴木暢幸)[13]。
「8番歌にある“善き人の坐国”とは、西方浄土を意味するが、『万葉集』の中にはまだ歌われていない浄土思想が言い表されているのは、さすがに讃仏歌である。(趣意)」(鈴木暢幸)[13]。
「21首を玩味すると、史学上、語学上、得るところが少なからずあり、参考となるが、文芸上には大なる価値があるとは思われない。(趣意)」(井上通泰)[70]。

太字はこちらで付けさせてもらったが、ボロクソにけなされている。

作者は同定されていないが、

引用
歌の作者[編集]

歌の作者は不明であり、文室浄三説、光明皇后説、数人の合作説がある。まず、一人の作か数人の合作かについて井上通泰は、「恐らく一人の作である。」[77]とし、その根拠として次の5つを挙げている。
1.歌体が統一されていること…21首はことごとく特殊な歌体を用いている。ゆえに、少なくとも諸人が思い思いによんだものを集めたものではない。(趣意)[78]
2.巧拙の差がないこと…もし数人の合作ならば、若干の傑作も交ざるところを、ことごとく凡作であり、文芸上の価値あるものがない。(趣意)
3.異様な語が所々に見えること…「そなわれる」を「そだれる」と言う人と、「のこせる」を「のける」と言う人と、「めずらし」を「めだし」と言う人とを別人とは認め難い。(趣意)
4.仏語直訳が所々に見えること…諸人が言い合わせて仏語直訳を用いたとは認め難い。(趣意)
5.字余りの句の多いこと…欠損の11番歌を除いて、字余りの句のないものは、わずかに5首(10・15・18・19・20番歌)だけである。このような諸人の趣味が、偶然に一致したとは認め難い。(趣意)[79]

太字はこちらで付けた。なんというか、うむ。



書道的には凄くて、石に彫られてるからこそそれがしっかり今までに伝わった訳だが、同時に稚拙だの異様だのそういう評価を現世で受ける羽目になった。
どうにもアンバランスなところの多い話である。一周回って前衛的か?
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テーマ:雑記 - ジャンル:サブカル

  1. 2015/12/02(水) 00:52:02|
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