ネット世代の雑評論

主にネット上に散らばる各々の事象についての紹介、及び評論

「ダンゲロス1969」読んだので軽く感想など

The 男爵ディーノ 著者のサイト
日本の学生運動 - Wikipedia
東大安田講堂事件 - Wikipedia

ダンゲロス。元々はネット上でTRPGのような形で能力者を作って対戦するゲームみたいなので、それの提唱者というか製作者みたいな架神恭介先生がそれを小説化した。戦闘破壊学園ダンゲロスは講談社から出て、そこそこ話題になって月刊ヤングマガジンでコミカライズされていた。
で、その小説の最新作というか前日譚(一気に1969年だが)というかが今回のダンゲロス1969である。

小説ダンゲロスの一番の特徴は元々がネット上のコミュニティで作られた設定を使っているという事だろう。
個人によって作られた設定ではなく、それ故か概ね完全に二次創作を認めている。そして、ゲーム上に使用するコマとして作られたキャラは、時としてかなりやばい設定を持っている。この場合のやばいというのは商業小説としての出版可能性としてのやばさであり、異常性癖やら過度な下ネタやら意味不明なエロなどで埋まっている。
一応、広めの基準を用いればライトノベルという事になるが、中高生向けではない。まあエログロは中高生の好むところのような気もするが。

ダンゲロス1969でKindleを用いた自費出版という形を取ったのはその辺りも理由なのだろう。どこの出版社もこれを出版しようという決断はしたがらないかもしれない。ついでに1969、この年にあった事件である東大安田講堂事件、学生運動を扱っているというのも、それも学生側に寄せて書いているところ、も出版可能性を下げているのかもしれない。

学生運動の学生たちと敵対する警察の公安たちを魔人、要するに能力者(ジョジョのスタンド能力者みたいなアレである)にして、学生運動の歴史をなぞってエログロに彩られたガッチガチの異能バトルが繰り広げられる。学生運動なので勝利条件も相手を全滅させるみたいな話ではなく、なるべく相手側を殺さないなど色々条件が付くあたりも面白いところ。


ダンゲロスを読むとまずその異様な18禁描写が目を引くが、まあその辺はわかりやすい要素であり、読んでいて特にうれしくもないそれだが単純に迫力がある。山田風太郎なんかもろくでもない下ネタ忍術ばっか書いていたが、それだけで非日常感が色濃く出る。うんこを投げる能力者とうんこと火を入れ替える能力者でコンボして火傷にうんこがついて感染症がどうとか言い出すのは現実と非現実を慌ただしく往復するようで面白い。
同時に、異常性癖者差別に対する著者の意識も伺えるか。

で、異能バトル。著者は漫画などを読んで即死能力者が活躍しないのを残念に思うらしいが、そういう訳で異能バトルの酸いも甘いもわかっている玄人好みの濃厚な展開が楽しめる。
能力者は味方にも能力を隠すものだし、一人の能力者によって戦局は一変する。しかし能力者も銃で撃たれれば死ぬ。
そんな中で、派手な面と向かってのタイマンバトルではなく非常に論理的且つ効率的な「戦闘」、ほぼ直接能力者が対峙せず隠された能力にはめて倒すような戦い、が繰り広げられる。小説という媒体では切ったはったを書くよりも正解であろうし、著者の性格にもあっている。架神先生は何事も論理性に重きを置く傾向が見られる。それ故に異常性癖等の極限の論理を好んで採り上げるのだろう。

そして最後に読み進めて感心するのはやはり取材によるしっかりとした描写であろう。
学生運動、まあ色々あった訳だが、その経緯などを丹念に調べており、その上で物語に合うように改変、パロディなどを加えている。
学生運動というテーマもダンゲロスのギリギリな極限さを考えると合致している。
様々な方向からの視点を採り上げており、それが実際偏っているかいないかは私にはわからないが、リアリティを持った作中背景が形成されている。


エログロ、異能バトル、設定と極限にまで練り込んだ本作は私にとってはかなり楽しめたが、万人向けとは言い難い。
単純にエログロは好き嫌いが分かれるのもそうだが、根幹設定は少なくとも小説版のダンゲロスの一作目でも読んでないとわからないだろう。
それに登場人物の名前が個性的に過ぎ、またそれぞれ統一感がなく、読んでいると四文字熟語なのか名前なのか一瞬誤解したり、誰が誰なのやら混乱しやすい。Kindleなので行や文字の大きさなんかを読むときに弄れるわけだが、登場人物の最初の漢字一文字が一番下にあると読み止まってしまう。まあ些細な点で電子書籍自体の問題ではあるのだが、通しで読むとややストレスに感じた。

著者の理想の作品であるのだろう。しかしであればこそ読者がたどり着くのが困難な境地にまで誘導し過ぎている感も強い。
そういった辺りでは商業小説としてのライトノベルとは一線を画すところもあるか。



ダンゲロス1969は多くの人々から称賛される作品、という訳ではないが、一個の極限を行った。
それだけで大きな価値を産み出したというものだろう。

興味のある方は読んでみていただきたい。その結果不愉快になっても私は知らないけども。講談社から出ている一作目から読む方が良いかも?あるいは漫画版とか。
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テーマ:雑記 - ジャンル:サブカル

  1. 2015/11/06(金) 01:01:57|
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