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「ディエンビエンフー」11巻まで読んだので感想など

ディエンビエンフー (漫画) - Wikipedia

ディエンビエンフー、ベトナム語で、つまりベトナム語のラテン・アルファベット表記たるクオック・グーで書くとĐiện Biên Phủとなる。ベトナムは元々漢字文化圏であったがフランスによる植民地化などを経て漢字を捨てている。

ディエンビエンフーというと第一次インドシナ戦争でベトナムがフランスを退け独立をものにした戦いの場として有名か。
この作品ではベトナム戦争、つまり第二次インドシナ戦争、アメリカとベトナムの戦争を扱っている訳だが、ベトナムの戦争の歴史を考える上で興味深いタイトルである。

ベトナム戦争。戦争の狂気というとまず第一に思い浮かぶ戦争である。そりゃまあ戦争なんてどこも狂っているが、稚拙な対応故泥沼に陥ったという形では近現代の大規模な戦争の中では特筆すべき点があるか。


まあ前置きが長くなったが、この作品は、ベトナム戦争を描く、という点に関して考えてみると、必ずしも秀逸な作品とは言えない場合もあるかもしれない。基本的にファンタジーなフィクションだし。掲載誌であるIKKIが休刊しくさったおかげで続刊がいつになるやも不透明である。IKKIの看板であったドロヘドロはヒバナで連載を続けているが、ディエンビエンフーはそこまでではなかったという具合か?最後の方の展開ぶっ飛んできてるし。
しかしベトナム戦争の大きなテーマである「狂気」、「戦争における狂気」、そういった面を見ると物凄いものがあると思う。

ディエンビエンフーの凄いところの一つとしては、ネームドキャラの死亡率が半端でなく高いということだろう。
主人公ヒカルとヒロインのお姫さま、「おばあちゃん」に関わった人物の9割近くは死んでいる。ほとんど死ぬために出てきているようなものである。死んでキャラとして完結するというか。ヒカルとお姫様はよく考えればプロローグで死んでるし。死んでなくても四肢がぶっ飛んだり、片目が失明したり、狂ったり、意識不明になったり、ストレスで太ったり、まあ色々である。しかもネームド殺してるの半分ぐらいはお姫さまなんだよね。
不条理に人が死ぬ戦争の悲劇。しかも大抵格好の悪い死に方。これもまたリアリティである。
デフォルメの効いた簡素な絵柄であればこそグロテスクさ、生理的嫌悪感は少ない(少ないというほどではない?)が、逆にそれが人の生死すら意味を失う乾いた戦争観を作り上げている。


作品中では何が正義で何が悪だとか説教がましいことは直接描かれない。むしろ、主人公のヒカリなどは戦争の中でのんきにお姫さまを想って自慰などして能天気さばかりが目立つし、登場人物の半分ほどは戦争自体に魅せられているような連中だ。
しかしその中で多数の悲劇を描くことで、戦争の狂気というものをしっかり照らし出している。
ちょっと流して読むと超人バトル漫画にしか見えないが、いや実際そういうところも大きいのだが、やはり戦争漫画として戦争漫画をやっている。戦争とは何たるかを作者の思想に基づいて描き切っている。そういう創作姿勢は私は非常に評価したいところである。


私が気に入ったキャラクターはベトナム残留日本兵ヤスクニか。色々カッコ良さそうなところもあり、実際指揮能力もありかっこいい感じで、見れば極右の、軍靴の音が聞こえてきそうな典型的な大日本帝国軍人という印象だが、それは飯炊き係として海軍カレーを作って戦争(第二次世界大戦)を終えた無念さ、コンプレックスがそうさせるもので、最後は恩賜の軍刀が錆び付いて抜けずにソンミ村で撃ち殺される。
結構エキセントリックなキャラクターであるがそれでいて親しみが持て、卑下も誇張もしない一人の人間として描かれている。戦争に翻弄された一人の軍人?色々と考えさせる。
他のキャラクターの生き死にもいろいろ考えさせるところがある。やはり人の死、キャラの死は、損失ではあるものの大きな印象を読者に与えるのだ。

難関も続く長編作品でBADENDはタブーであるが、この作品はプロローグで主人公とヒロインの将来的な死を描いている。
ベトナム戦争というテーマでグッドエンドはあり得ないからか?しかし死がバッドエンドとも限らないし、あえて先に書くことでバッドエンドを可能なものとしているのかもしれない。

書店でジャケ買いした漫画だが予想以上に面白かった。結構人を選ぶかもしれないがあえてお勧めしたい作品である。
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テーマ:読書 - ジャンル:サブカル

  1. 2015/10/23(金) 01:30:52|
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