ネット世代の雑評論

主にネット上に散らばる各々の事象についての紹介、及び評論

「WORLD END ECONOMiCA」全三巻感想

WORLD END ECONOMiCA |公式サイト|Spicy Tails

元々は同人ノベルだったらしいけど電撃文庫版ね。
一冊一冊がホライゾンなみに厚くて困る。いや面白かったので困らないが。

ああ、支倉先生の本の感想書くたびに書いてるけど、作者と作品は別個のものと私は見ているからね。もちろん作者が作品を書いている訳だが、作者がどうあれ作品は作品として評価する。同一著者間の考察とか作者の環境による影響を考えたりはするけどね。その辺はいつだったか詳しく書いたがまあそんな感じで。


WORLD END ECONOMiCA。月面都市の株式市場を中心とした経済を主軸として書かれたライトノベルである。もちろん支倉先生なので甘ったるいラブ要素もきっちりあるが。SF的要素は軌道エレベーターとか出てくるだけでそれほど強くは無い。要所要所の理由付けに使われているといった印象。あくまで仕掛けは現在にも通じる経済の論理である。

株のトレーディングで成り上がろうとする少年ハルと、数学の才能に溢れた少女ハガナ、そして狡猾にして大胆な金融街でヘッジファンドを経営するバートンを中心として話が回っていく。

単純な株の売り買いから中央銀行の輪転機を回すような事態まで幅広く扱っている。作者デビュー作の狼と香辛料も経済の話だがWORLD END ECONOMiCAは現代の経済らしい熱狂と絶望が対面するマネーゲームを、事実株取引を趣味(以上?)とする作者が実感する感情と共にリアリティをもって描かれている。


まあ正直、私はこういう経済の話は詳しくないのだが、だからこそ説明がわかりやすく入り込みやすいので非常に楽しく読めた。
ほとんど狂気としか思えない賭けをする投資家、チャートを数学的に計算し機械のように儲けるクオンツ、金をもてあそび経済を作る支配者。これらが折り重なって経済の世界は息をしている。
投資家が扱う金は一般人が何百回輪廻転生しても稼ぎきれない数字。資本主義の世界が端的に表れる。

そんな中で自分の夢を叶えるために株式市場に挑み続けるハル。作者のお決まりパターンだが絶望的な時は完全にギリギリまで追い詰められ、失うときは本当に手痛く失う。しかし、その分それを脱して逆転した時のカタルシスは凄まじい。
この小説に描かれる金融的事件は実際に合ったモノを月面都市に合わせてリファインしたものの様だが、だからこそ論理が真に迫っており、非常に興味深い。
そういったレベルの金銭と共に恋愛が掛かれるのが凄い。何百億という金に匹敵する恋。恋愛と言うミニマムな話に戻ったところで世界経済の話。これがまた動的である種幻想的というか、感動的というか、読者を興奮させる。

必死に動いて、探って、考えて、最終的に何を得るのか。
一人の若者の、夢の実現の話でもある。アメリカンドリームならぬルナティックドリーム?経済の熱狂はまさしくルナティックだという訳だ。



作者の趣味、感性、倫理観が留めも無く詰まった、元々同人小説だったというのがわかる魂のこもった小説である。
小難しい所や厭な展開、無茶に分厚い一冊一冊など、好き嫌いが分かれる作品であったかもしれない。
しかし、私のような人間にとってはかなり好み、何度も読み返してしまう最高な話であった。

最近、作者のメインシリーズである「マグダラで眠れ」が止まっているが、WORLD END ECONOMiCAの電撃文庫での観光も終わったしそろそろ再開するだろうか。
漫画版マグダラも終わったし、そろそろまた小説版が読みたい。期待して注目したい。
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テーマ:雑記 - ジャンル:サブカル

  1. 2015/07/12(日) 00:17:51|
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