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ハトポポコ「平成生まれ」感想、及び日常系の変遷

まんがタイムきららキャラット - Wikipedia
平成生まれ - Wikipedia
平成生まれ (へいせいうまれ)とは【ピクシブ百科事典】

空気系 - Wikipedia
4コマ漫画 - Wikipedia
萌え - Wikipedia


日常系、空気系と呼ばれるジャンルがある。日常のたわいもない会話を描く作品群であり、顕著な特徴として物語性の排除や萌え系キャラの偏重などが挙げられる。
主流な媒体としては4コマ漫画が多いが、そうでない漫画作品やライトノベル、アニメにもよく見られる。

90年代後半からその先駆的な作品群を挙げられるが、日常系を大成させたのは「あずまんが大王」であろう。
それから0年代は日常系の黄金時代とでも言おうか、種々のヒット作品が現れる。「らき☆すた」や「けいおん!」などはあまりにも有名か。
その辺りで飽和したか、日常系にありきたりな舞台設定(学園、女子など)を用いて日常系じゃないことをするメタ日常系作品も増えてきた。「日常」などは旧来のギャグ漫画の手法でありながら、タイトルにもあるとおり日常系の皮をかぶっている。やや日常系から離れるが、「ひぐらしのなく頃に」も日常をほんわかと描いた後ホラーテイストにして落とすことをしていた。もっとも「ひぐらし」は日常系の前駆にもなった美少女ゲームの前提から描かれているという印象だが。

そして、2011年の東日本大震災と呼応してか、「魔法少女まどか☆マギカ」や「進撃の巨人」といった作品群によりハードな作風の作品が時代の主流となっていった、という雰囲気もあるが、まだまだ日常系は元気であり、一過性のブームを超えて安定したジャンルへと成長したと考えられている。

日常系は新世紀エヴァンゲリオンに代表されるセカイ系と呼ばれる作品群と良く対比され、セカイ系の重厚かつ複雑な世界観に疲弊した消費者が単純でわかりやすい日常系に飛びついたと説明されるが、今日においては逆の現象も起こっているということか。
あるいは、消費者の好み・ブーム・流行が日常系に代表されるソフトな作風とセカイ系に代表されるハードな作風の間で振動を繰り返しているのかもしれない。


日常系の4コマ漫画専門誌で今一番勢いがあるのはまんがタイムきららキャラット(以下キャラット)だろうか。
まんがタイムのきららのキャラットである。ややこしい。
けいおん!やひだまりスケッチ、GAやAちゃんねるに、キルミーベイベーと話題を呼んだアニメ化作品が勢ぞろいしている。

平成生まれもキャラット連載漫画である。全2巻と平成生まれ2が1巻まで発売されている。
平成生まれは上記で定義したメタ日常系と言えるだろうか。高校での女子生徒達の会話劇でありながら、ギャグ漫画である。
こういったメタ日常系はキャラットには幾つかあり、キルミーベイベーやはるみねーしょんもその分類に入るだろう。両方とも私は好きである。
そして、平成生まれも私の好みである。

キルミーベイベーはその強烈な暴力描写も含めた突拍子もないギャグ、はるみねーしょんはひたすら駄洒落を繰り返す辺りが日常系からの逸脱だが、平成生まれはどこが日常系でないのか。

これはキャラに集約される話だと思うので、まず主要なキャラを紹介していこう。
なお、主要キャラの目はベタや白塗り、線で現されるが、モブキャラの目にはハイライトがある辺りメタ日常系を意識していることが伺われる。

佐藤
主人公。黒髪で八重歯が特徴的な、まあ外見的には普通な少女だが、内面的にはかなりの問題児、というかクズである。
くだらない嘘を言って他人を陥れたり、人の弱みに付け込んで馬鹿にしたり、脈絡なくいきなり大声をあげたり、人を見下したいがために意見をころころ変えたりとやりたい放題である。その割に妙に成績がいいような風でもある。

四村
ヨムラと読む。佐藤の相方的存在であり、一見クールだが佐藤が調子に乗ると暴言を吐いたり殴ったりする。
極度のブラコンでありそれに言及されると余裕がなくなる。意外と成績は良くないらしい。

中川
背の低いピュアな女子で、性格は子供っぽく見栄っ張り。周囲からかわいいと言われており、かなり優等生な雰囲気もある。
ちょっとしたことですぐに驚いたり平静を崩す。原田が一番の友達だが佐藤との絡みも多く、良くオモチャにされている。

原田
中川の友達であり、非常に背が高い。中々謎な人物で、異常な記憶力や体温を自在に上げ下げ出来る能力、昼間に星の数を数えたり、中川を持ち上げて体重を小数点含めて測ったりできる。成績は全教科満点レベルのトップのようだ。こうどうも変なことをよくして中川を困らせたりする。

藤井
美人であり、常にキラキラとしたエフェクトが付いている。女子高生ながらモデルをやっており、クラスの女子のあこがれの的だが、完全に馬鹿であり、会話内容も小学生レベルのそれである。雪にシロップをかけて食べたり(その結果熱を出す)、変な昆虫を見つけたから吉村と一緒に放課後残って捕まえたりとすることが女子高生のそれではない。成績も非常に悪いようだ。

吉村
藤井の一番の友人である。やはり馬鹿だが藤井よりはマシかもしれない。かなり無邪気な性格で、藤井が言う無茶苦茶を真に受けたりする。交友関係は広いようだ。目がかなり特殊な描き方をされている(目がブレてる?)。

森口
平成生まれ2からの登場であり、常に震えている。マルシアの友達だが、割と意地悪なところがあり、口も汚い。嘘もつく。
メガネ女子でありメガネを外すとのび太のような3型の目になり何も見えないほどの近眼。

マルシア
元気な馬鹿。森口の友達だが、よく他人と間違える。勢いで行動して森口を巻き込んで困らせる。


こんなところである。基本はお決まりの二人コンビの会話だが、たまに絡みもある。
ボケと突っ込み、あるいはボケとボケでわかれており、ギャグ漫画であることを強く示している。たまに暴力も入る辺りは日常系からの逸脱と言えるか。
どうやら舞台の高校は大阪(作者は大阪在住らしい)にあるようで、多くの登場人物が関西弁、それも南大阪?のそれを使っている。語尾に「~でな」ってつけてる方言はどこだっけ?
それが地域性を強く出しており、日常会話を色濃く感じさせる。その中で日常会話・日常生活から遊離するところが面白い・この漫画の魅力なのだと思う。

特に佐藤のクズっぷりは群を抜いて笑える。日常系では女子高生の日常会話が主成分だが、日常的に佐藤が言ってるようなことを言っていたら日常生活を送れないだろう。実際狼少年張りに信用されていない。キャラットでは間違いなく一番性格の悪いキャラクターだろう。「メタ日常系」性の最たるところが主人公にある。
その割に、授業も真面目に受けてそうでもないのに成績が良い風があるのが本当になんというか、厭な奴である。しかしそれでも四村とはきっちり友人関係があることがたまに示されるところが何とも言えぬ感情を呼び起こす。



日常系は創作ジャンルの一ジャンルとして確固とした立場を築いたが、やはり流行というものがあり、流行ったモノにはそれを超えようという流れがまた来るものだ。
平成生まれはその流れを強く意識して作りだされた作品、という感が強い。同作者の、竹書房系4コマ漫画誌に掲載されているけんもほろろはやや日常系よりであることを考えると更に色濃く目立つ。
つまりはギャグ漫画なわけで、だからこそ画力というか絵の密度もキャラットの他の日常系漫画と比べると低く感じられるが、問題ない訳である。それならば昔からの不条理系4コマ、例えば吉田戦車のそれなどと同じようなものかというとそれは違い、日常系を下敷きにして新しいものがあるのだ。
ブームは傍から見ると繰り返しのようにも見えるが、流行の前提を積み重ねあるいはいわば螺旋のように動き、文化は常に変遷しながら進化を遂げているのだ。

これからも創作文化の時代の最先端に注目していきたい。



※1/13追記
読み返したら書き切れてなかった所が多いと思ったので追記するが、キャラが概ね日常系にいてはならないキャラクター性なんだよね。
佐藤は言うに及ばず、四村も冷酷と言っていいレベルで冷たいし、原田なんか言うに及ばない。藤井もまともな日常会話という時点で躓いているし、森口もなんやかんやでクズである。中川はきっちり日常系でやっていけるが、マルシアはギリギリだし、吉村も割とダメな方だろう。
そんな中で繰り広げられる日常会話、というコンセプトなのかもしれない。平成生まれの狂った世の中の日常、みたいな?

平成生まれは不況しか知らないという話をよく聞くが、主人公の佐藤が進路について迷う回がある。将来に希望を持てない平成生まれの少年少女にとって難解なテーマとなり得る。その回はギャグだけでなく佐藤は真面目に迷っていた(他人から見てどうかは別として)。佐藤は会話によって答えを見つけるのではなく、他人の考えを否定し、答えを見つけなかった。日常系のパロディというよりも日常系のアンチとでもいえる逸脱を感じのはこの辺だったかもしれない。
日常系を知っているからこそ(まあ、読む人間の大半は知っているからこそ成り立つのだが)面白いという仕掛けを多く持つ作品であり、メタ日常系、ポスト日常系、アンチ日常系という意識が強く感じられる。

しかし佐藤は良いキャラだ。余りにも悪辣に日常を過ごすが故に、本当に重要な時相手にされない。
強がりで強情で天邪鬼?この作品のキャラは単純に明示された描写以上のキャラクター性を抱えているように思える。
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テーマ:読書 - ジャンル:サブカル

  1. 2015/01/11(日) 01:26:07|
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