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「デスニードラウンド」全三巻、読んだので感想

オーバーラップ文庫|デスニードラウンド特設サイト
アサウラ - Wikipedia
オーバーラップ (企業) - Wikipedia

小説感想回。
このラノ2015に載ってた紹介でますます読みたくなってきたので、買って読んだ。凄かったので感想を書く。

デスニードラウンド。まあめんどくさいので書いてしまうが、このタイトルはディズニーランドのパロディ、捩りである。
この小説は、ディズニーのミッキーやマクドナルドのドナルド、警視庁のピーポくん等(もちろん名前は変えられてるが容易に類推可能である)と、銃火器で武装した傭兵部隊(主人公含む)が戦う話である。この時点で明らかにヤバい。

作者のアサウラ先生は集英社のスーパーダッシュ文庫にて「ベン・トー」シリーズを書いているので有名か。特売弁当をめぐる戦いの話らしいが、私はなんとなく読んでない。まあ結構有名だし、実力は確かなのだろう。

デスニードラウンドの企画は前からあったようだが、どの出版社に相談しても無視されて、オーバーラップ文庫から小説執筆の誘いが来たとき、断るつもりでデスニードラウンドなら書くと言ったところOKされてしまった、という具合らしい。
当時オーバーラップ文庫は創刊期。そのラインナップに有名作家の小説を入れておきたかったという事情が透けて見えるが、ライトノベルで完全にアニメ化、その他メディアミックス不可能な作品を出すというのは中々勇気があると言ってもいい。実際、デスニードラウンドは弁護士と相談しながら執筆されており、法律的に「大変危険」なところは弁護士の忠告に従って修正していたりするとか。

デスニードラウンドは全3巻で完結、まあ長々やったら本気で危ないし、創刊期のスタートダッシュのために作られた作品と考えると妥当だが、惜しいという感も強い。しかしこの甲斐あってか、メディアファクトリーから退社した社員で作られたオーバーラップ、そしてそのライトノベルレーベルであるオーバーラップ文庫は順調という感がある。


この作品の魅力はまず、戦う敵であるマスコットキャラクター達の悪趣味な大暴れだろう。
マクドナルドもといワックマインド(MacじゃなくWac、と)のロナウダ・ワックマインドはマッドピエロそのもので、異常な身体能力、再生力を前提に、ロナウダ・マジックスと叫び幻覚を見せたり銃弾を遮断する障壁を展開したりとやりたい放題。そのくせ、明らかに実際のドナルドが行っていたような言動を繰り返す辺りは非常に邪悪である。

警視庁のピーポくんもといP君は、いうなれば中に入って操縦するバイオパワードスーツ。強靭な肉体に再生力、センサー類(巨大な目、耳、体毛など)も強力で電子的に警視庁からサポートされていたりもする。これが機関銃を抱えて涎を垂らしながら襲ってくるのだからやりきれない。操縦者は(精神安定のために使うため)例外なく薬物中毒になってしまっている、バイオパワードスーツを脱ぐ際にP君の体液やアレルギー因子のため嘔吐する、長期間の着用は一体化、肉体・精神ともどもP君となってしまうため禁止されているなどなどイカレた描写に事欠かない。

ディスニーランド、もといデスニードラウンドという施設は、実際にテーマパークで、昼の間は様々なマスコットキャラクターがゲスツ、つまり客を喜ばせる。しかし、夜は残酷なショービジネスを行う米軍の実験施設で、マスコットキャラクターやキャストは改造された人間で特別に招待されたゲスツを取り殺す、あるいは輪姦させる様子をクラブ666なるデスニードランド内の高級会員制クラブの客が鑑賞するという具合である。埋立地、とも称され、ワックマインドやP君はその技術の恩恵に与っているのだ。まさに悪夢と絶望の国である。
そしてミッキーマウスならぬニッティー・ザ・モルモットはその影の支配者であり、ディスニーならぬ、デスニードラウンドを作り上げた天才技術者のクローン脳が入った超技術の結晶である。ちなみにデスニードラウンドの設定は、実験に用いられるモルモットが、飼育ケースの中の車輪を回しながら見る夢の世界、ということらしい。頭痛がしてくる。

ちなみにこれらの化け物達の食人描写は多い。とことんまで悪趣味で、後述のメシ描写との対比もあいまって中々厭な気分になれる。

他にもチョイ役だがふなっしーならぬふなむっしーや、ヤンとマーなる傭兵の兄弟が出てきたりもする。
作品自体の怖さもあるが、これ作者とか大丈夫なのかというメタ次元での怖さもある。

一方主人公側は、北海道が独立してたりする、銃がやや身近なパラレルワールドの日本の、組合に属する傭兵部隊の様な連中である。
主人公の属する松倉チームは、北海道独立戦争、栃木群馬間紛争において一人の死者も出さず全員五体満足という伝説のチームであり、ギアと呼ばれるオーバーテクノロジーなパワードスーツまで所有している。主人公は親が逃げたおかげで親の借金を擦り付けられた女子高生であり、借金を返すのに股を開くのも内臓を売るのも善しとせず傭兵稼業に手を出した新人である。
不死身と言われるプロの傭兵チームの中で、デスニードラウンドの狂気の産物と闘いながら、どのような成長を遂げていくか、これがこの作品の軸である。
倫理観が薄く、卑劣非道な作戦も使う傭兵たち。全ては金のため?
主人公が学ぶのは社会性ではなく、より鮮烈な人生の生き方というものであろう。特殊な世界観設定がある種の本質を浮き彫りにするのだ。


デスニードラウンドのテーマというか、主要なところは上記に書いた通り、狂気の産物たる化け物、マスコットキャラ達を銃火器でどのように倒すか、というところであり、そこに様々な銃撃戦、頭も使えば体も使う、を通して何かを語るということであるが、副次的な、それらとは直接関係のない要素もある。

例を挙げればメシ描写。ベン・トーで培われたか、非常に濃厚な、グルメ小説と言っていいほどの食に関する描写がある。
どちらかというと、洗練されたそれ、高級なレストランで食べる料理というよりも、日常食べるご飯やあるいはジャンクフードのおいしさ、というものが多い。クラブ666のコース料理もまあおいしそうではあったがどこか否定的なソレがあった。

他にも銃火器のマニアックな説明。ガンマニア必見と言えるか。作中の登場人物が使う銃のほとんど全て(というか全て?)の名前が明記されている。ワックの警備用店員(改造手術済み)が構える銃がMAC-10というヒドいギャグなんかもある。ちなみに関係ないが、ロナウドが使っているパソコンもマックである。



露悪的なパロディ、凄惨なグロ描写、下卑たエロ描写、頭脳戦、ギリギリのバトル。人を興奮させるものでいっぱいである。言うまでもなく、こういったものは好き嫌い激しく、万人向けとは言えない。しかし、好みの人ならば完全に中毒になってしまうだろう。ダンゲロスの作者の人とか好きそう。
私にとってもかなり重要な位置を占める作品となった。明らかにアニメ化不可能で、社会的にギリギリな内容であるが、こういったものこそ今の社会に必要なものではないか。
超えてはならないラインなどスタートラインに過ぎない。そこからどこまで飛ぶか、その究極の果てに何があるのか。それが人類の求めるモノなのかもしれない。

※追記 書き損じたところとか
第3巻では最終的に頭脳戦というよりややゴリ押しになって来てるところを問題視する向きもあるが、あれは復讐・報復であり、復讐の物語にふさわしいのはゴリ押しによる勝利ではないか、とも思う。
戦いのギリギリさでは第一巻が、狂気の技術のおぞましさでは第二巻が、パロディの悪趣味さでは第三巻が突出しているように感じた。
登場人物への感情移入がちゃんと出来るのも見逃せない点。悪役たちの悲哀、主人公側の愉快さ、どちらも上質なものであった。
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テーマ:読書 - ジャンル:サブカル

  1. 2014/11/28(金) 19:04:06|
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