ネット世代の雑評論

主にネット上に散らばる各々の事象についての紹介、及び評論

「キノの旅XVIII」感想

ネタバレは当然あるので注意。
読み終わった人や気にしない人向け。



毎年、10月にキノの旅は発売される。
1年に一冊の増加ということになる(初期は年に何冊も出してたが)が、今回でもう「XVIII」、18巻という結果になった。ローマ数字表記がやや苦しくなってきているレベルだ。

時雨沢先生は、10月に発売されるキノ以外に別個の作品を幾つか書いている。
今年はいささか多く、異常にタイトルが長いラノベ家ラノベ3巻に、キノに、12月にはSAOのスピンオフ作品を出す。いつもは3~4巻が普通なのに。
時雨沢先生は電撃文庫の売れっ子の中ではやや遅筆の傾向があるのだが、それだけ頑張ったのだろう。

表紙から見ていこう。赤一色の背景に赤く高級そうな椅子に座るキノ。タイトルや椅子の上にいるトカゲはそれに反するように青色。背景には白一色で描かれた鳥の群れも。
何を指し示しているのかはわからないが、色遣いが面白い。流石黒星先生。
裏表紙は陸、と地面はアスファルトと横断歩道?となると、表表紙に書かれた地面に描かれた白い模様もそういう類?赤い地面だが。

まあ折り返しのアレはいいとして、カバー裏。いつも通りの変則あとがき。
確かにカバー裏は見ときたいよね。おまけ的な面白さがある。図書館ではアレだが。


で、本編。
キノの旅は短編集だが、今回は各エピソードごとに繋がりがあるものが散見された。短編集ならではの手法と言えるか?
よって、繋がりのあるエピソードはまとめて感想を書こう。

「牛の国」「止まった国」
キノ達が訪れた、誰も人間がおらず牛がただ機械により搾乳されている国、この国の正体についてキノ達は勘づいていた。それは昔、師匠たちが行った、乳幼児たちが延々と機械の中で眠り続ける国であった。
こういう、結末を先に書いて、それがどうしてそうなったのかを書く手法は時雨沢先生の得意技である。延々と牛乳が作られる国に意味があるか?意味は誰かが作り出すものである。

「草原の話」
時雨沢先生らしい、なんというか綺麗というか考えさせるというか、単純な感情に収まらない話。
フルートの銃器デザインがここに来てようやく。アレ、基本的に架空の銃だもんね。二式テラ銃が発想の元とかいう話だけど。デザインしたのはバイク漫画の人か。

「キノの旅の国・b」「キノの旅の国・a」
いつものプロローグとエピローグで前後逆になってるアレ。
いきなりこんな話を持ってくる辺り中々アレである。まあ劇中劇。いかに脚色されていようともこういうのは面白ければいいものだ。追剥行為辺りはキノは普通にやるし。
しかしエルメス・マイクロ・ミサイルって……
キノが最終的に突っ込みをあきらめてるあたり笑える。
あと劇中のモトラドもしゃべるモトラドでいいの?この辺の設定に関してはかなり念を入れてシャットアウトされている感がある。キノに最終巻が出るならその辺にも話が及ぶか。

「スポーツの国」
戦争やる代わりにオリンピックやって勝敗を決める国々。
キノが傍観者として見送った辺りもキノらしい。自分の利益にならないならば会って話をした人間が死んだところで手を出さない。危険だからね。全くラノベの主人公としては非常にアレである。でもまあ戦争起こそうとしてる側だしねえ。運命は決まっていた。こういうシニカルなところがキノの旅らしい。

「税金の国」
キノらしい皮肉の利いた話。火事が起きてるのに真剣に隣家をびしょ濡れにする辺りがアホ臭くてよかった。
で、キノの方はその国のロジックに沿った解決。主人公が意図的に交通事故を起こしてたんまり宝石をもらう。うむ。

「主食の国」「チョコレートの話」
この二つは題材が同じというだけで関連性のある話ではないが、まあ一応。
そりゃチョコばっか食ってるわけにはいかんけどたまに食べるとおいしいよねという結論は同じ。
チョコレートという食べ物の特殊性。

「遺産の国」
こういう昔の遺産というのは住んでる側にとっては面倒なものである。
しかし「ティー様万歳!」は笑えた。幼女に対して言う言葉ではない。
で、ぶっ壊したところでより状況は悪くなったか?静が訪れてキノが後から来る。これで時間差を持って書ける訳だ。

「復讐の国」
キノ、フォト、静の三者からある夫婦の物語を書く。
なるほど美容整形で変装ね。復讐心というのは時にどんな感情よりも大きくなる。

「お金の国」
師匠の話からキノの旅のパターン。
コレクターが集めたものが、その当時には価値無きものであっても時を経て高額なものになることがある。
そういうコレクターは珍しくないもんね。

「私の戦争」
こうきたか。叙述トリック?
テニスラケットを狙撃ライフルに見立てて人を打つマネをする、過去の人気作家。
キノや警察は冷静に処理する。ガスなあ。


あとがき。
まあカバー裏のはもう書いたけど、馬鹿にしか見えないあとがきとか言って白紙出す度胸もあれである。
で、何故か作画の黒星先生も最近はあとがき書いてる訳だが、まあ概ねいつも通り。来年に画集出すんだっけ?買おうかなあ。



こんなところか。
今回は色々関連したエピソードや、静やフォト、師匠の話と混ぜた話が多かった。
長大な巻数になりながらもそれぞれのエピソードを切り取って読んでも面白く読めるあたり完成されている。

キノはラノベ的じゃないラノベだよね。
電撃文庫というラノベラノベしたレーベルから出ているのにも拘らず、かなりラノベしていない。
キノはライトノベルという言葉の定義の広さ、あるいは奇妙さの一因となっているのやもしれない。
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テーマ:読書 - ジャンル:サブカル

  1. 2014/10/10(金) 23:56:38|
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  3. | コメント:2
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コメント

キノの旅

どれもキノらしい物語でした。私はこういう展開が好きですよ。あのチョコレートの話が笑えました。
  1. 2015/04/01(水) 16:43:13 |
  2. URL |
  3. イクス #-
  4. [ 編集 ]

Re: キノの旅

> どれもキノらしい物語でした。私はこういう展開が好きですよ。あのチョコレートの話が笑えました。

キノ、他の小説には替えがたい魅力がありますよね。独特さが強みになっているというか。
  1. 2015/04/01(水) 22:11:24 |
  2. URL |
  3. たていと1 #-
  4. [ 編集 ]

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