ネット世代の雑評論

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阿部共実「ちーちゃんはちょっと足りない」読んで凄かったので感想書く

阿部共実 - Wikipedia
ちーちゃんはちょっと足りない - Wikipedia


週刊少年チャンピオンで「空が灰色だから」を連載してた阿部共実先生がなんか新しい単行本を出してるのをたまたま本屋で確認したので買った(同日発売のブラックギャラクシー6は後日気付いて買った。救われた。)が、阿部共実先生絶好調で、真の名作を人の心を動かすモノだとするとこれこそがそうだ、という出来だったので感想を書く。

ああそうそう。ネタバレは余裕で書きまくるからそのつもりで。





この漫画はちーちゃんという「ちょっと足りない」中学生とその周りを描いている。
ちーちゃんこと南山千恵、ナツ、旭の三人のグループを中心に物語が進んでいく。

千恵は中学生なのに割り算が出来ない。掛け算もようやく九九が作中で覚えられたかどうかというぐらい。もちろん他の教科も悲惨の一言で社会科23点で大喜びする。
行動も野性児というか、突拍子もない事をしたり、大騒ぎしたりする。
団地住まいである。

ナツはちーちゃんと同じ団地に住んでいる。千恵とはその縁で親友になっている。千恵に隠れて結構頭は悪い。
団地住まい。千恵と同じ。

旭は千恵とナツの友達。結構金持ちの家の子で成績もいい。
3年の先輩と隠れて付き合っている。


団地。その言葉が示す意味は重い。
公共住宅団地は、あまりお金の無い家族が住むものである。
「団地の子と遊んじゃダメ」。こういう理不尽な命令を親から下されるという話はよく聞く。
何故か。貧乏は罪ではないだろう。差別ではないか?子供心にも疑問に思うだろう。理由を聞いても答えない親もいる。
要は、衣食足りて礼節を知ると言う事だろう。
もちろん、アフリカの子供達の用にすぐに飢える危険性とかそういう貧乏さではないが、何もかも「足りてない」。子供も周りと比較して、それを知る。あの子の家は何もかもあるのに。
もちろんお金が無ければ教育環境も乏しく、実際成績が高い子供も多く無いものだ。貧乏の連鎖である。

千恵。これは私の独断と偏見で、どこにもそれを示す決定的な何かがある訳ではないが、千恵は、単純な漫画的な「馬鹿」ではなく、軽度の知的障害ではないか?そう思える。そう思うと、また重い。
知的障害者に対して我々はどういった視点で見ているだろうか?現代は平等の原則があるが、どうにも同じ立場として見るのは難しい。
しかし社会には存在するし、その人なりに生きている。その人なりの認識で。その人なりの努力で。

中学生。思春期。自我の目覚め。
この痛みを表現するのは昔から阿部先生は得意である。


「ちーちゃんはちょっと足りない」は一巻完結である。
最初の方は、基本的に女子中学生の中学生活の日常を描く、いわゆる「日常モノ」に近い。
実際ほんわかとしたムードで読める。

中盤辺りから、旭の彼氏発覚や千恵の成長描写、ギャル系っぽい藤岡の登場でややノリが変わってくる。

そして、女子バスケ部の顧問への誕生日プレゼント代盗難事件から物語の雰囲気は絶望的なソレへ。
二人目の主人公、真の主人公はナツである。



ここから先の展開についてグダグダ述べるのは止めよう。
罪の意識、中学生の友達関係の脆さ、どうしようもできないエゴ、人の弱さ。
全てがただ進行するだけで、最悪が生まれる。

最後の最後で、救いとも絶望ともつかない結末。千恵とナツ。千恵も変わろうとしている。ずっと友達。ふむ
その後もキャラクターの人生は続いていくというリアルを感じさせる。
この後二人はどうなっていくのか。思いを馳せると感慨深い。一話の最終頁と最終話の最終頁がほぼ同じ構図で旭がいないというのが一つの答えを与え、物語は幕を閉じる。背景の空き車庫は最終話では埋まっている。



どうしようもない現実の中、まだまだ足りていない中学生達は自我に目覚める。
その中での悲喜交々。それを我々はみんな体験している。
だからこそこの作品はこんなにも我々の心を動かすのだ。

満ち足りた人間などまずいない。人は誰しも弱さを持っているのだ。弱いからこそ、人にとって価値があるのか。弱いからこそ、人にとって脅威になるのか。
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テーマ:雑記 - ジャンル:サブカル

  1. 2014/05/11(日) 02:06:30|
  2. | トラックバック:0
  3. | コメント:5
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  1. 2014/05/16(金) 03:00:17 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集 ]

読みました。

一見普通に見える女の子の
闇。
病み。
依存性。

ちーちゃんは成長して行く。
取り残されるのが怖いナツ。

思春期にありがちな、大人になれば何でもなかった、リアルで深刻な恐怖。

誰が彼女に「だいじょうぶだよ。」と言ってあげられるのか。

それはきっと、読者の役目。

これもひとつの、依存なのかも知れないが。

そう言う意味で、共感型であり、豊かな、そして少し悲しい、当たり前でありながら当たり前じゃない、そんな話だと感じました。
  1. 2014/07/23(水) 07:50:18 |
  2. URL |
  3. 茶沢山 #Ou4fw5o6
  4. [ 編集 ]

Re: タイトルなし

> 読みました。
>
> 一見普通に見える女の子の
> 闇。
> 病み。
> 依存性。
>
> ちーちゃんは成長して行く。
> 取り残されるのが怖いナツ。
>
> 思春期にありがちな、大人になれば何でもなかった、リアルで深刻な恐怖。
>
> 誰が彼女に「だいじょうぶだよ。」と言ってあげられるのか。
>
> それはきっと、読者の役目。
>
> これもひとつの、依存なのかも知れないが。
>
> そう言う意味で、共感型であり、豊かな、そして少し悲しい、当たり前でありながら当たり前じゃない、そんな話だと感じました。

思春期というのはやはり最も人間として敏感で、重要な時期で、それをこの漫画は極限まで抉り出すように表現していますね。
なんでもないことといえばそうなのですが、その未熟な心の中では天地が裂けるような大惨事となっている。
どんな普通の人にもある思春期の深刻な病み、といったところでしょうか。
ほんとすごいですよね。
  1. 2014/07/23(水) 23:34:54 |
  2. URL |
  3. たていと1 #-
  4. [ 編集 ]

的外れ
  1. 2016/02/02(火) 18:22:28 |
  2. URL |
  3. ああか #-
  4. [ 編集 ]

Re:

ですかね?
まあ読んで考えることが重要で、作者の意図がどうあれ受けた印象、感動は変わらないでしょう。
  1. 2016/02/02(火) 20:14:55 |
  2. URL |
  3. たていと1 #-
  4. [ 編集 ]

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