ネット世代の雑評論

主にネット上に散らばる各々の事象についての紹介、及び評論

「キノの旅ⅩⅦ」感想

ネタバレは当然あるよ。
基本読んだ人か気にしない人向け。


大体十月にはキノが発売する。

暑さの収まった秋に更に嬉しいことがあるのだ。
時雨沢先生の作品は私にとってかなり別格なのだが、その中でもやはりキノは別格と言う感じがする。
ライトノベル界隈でも、何かしら別格的扱いを受けている感がある。ライトノベル初の新聞連載となったのもこれらの影響があるのかもしれない。


キノの旅17巻は分厚い。いや、そら某ホライゾンとか京極夏彦みたいな背徳的な分厚さではないが、いつのもキノの旅と比べると非常に分厚い。
これは単純に新聞連載の分も新聞連載完結分まで全て入れているからである。
標準価格の関係でいつものキノの旅よりやや高いがそれでもお得感は強い。

表紙を見よう。銃を持ち手足を広げたキノに丸めた新聞がうねる背景。そして新カバー形式の白枠付きに改訂されている。新カバーはレアなイラストを表紙にしているだけで中身に変化はないらしいので、ちょっと迷ったけど買わなかったがこういう影響もある。
トレードマークの茶色のコートが上に流れているのが印象的である。丸めた新聞はキノの旅の新聞連載を指し示すのか。

裏表紙は新聞が張られた恐竜の頭骨の化石の中にティー?新聞を固めて作った化石のレプリカかも。

表折り返し。ふむ。キノでもめったにない大事件?キノ全体のストーリーも繋がって進んできている?

裏折り返し。相変わらずよくわからんことが書かれている。黒星紅白先生のは変わらず。

そしてカバー裏。カバー表のパロディと言うか架け替えリバーシブル風になっている。
タイトルが
「自分以外の旅人が犠牲になった事件からモトラドで逃げ出して、森の中の一軒家、“師匠”という正体不明の老婆に助けられて何年かしばらく二人で暮らし、最後にはモトラドのエルメスでこの世界を巡る旅に出た『大人の国』出身の若者キノの生涯と不思議で驚きに満ちた旅についての記述」
とかいうのになっている。
なんかニコニコで書く小説も「男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。―Time to Play―」
とかいう長タイトルになっていて、「一つの大陸の物語~アリソンとヴィルとリリアとトレイズとメグとセロンとその他~」から長タイトルに嵌っているのだと推測できる。
全部違った感じの長タイトルで笑える。一つの大陸のはテンプレ的なのを組み込んだサブタイトル、ニコニコのTime to Playは典型的ラノベ風(Time to Playだけはキノの話のサブタイトルっぽい)、カバー裏のは19世紀風?
なんにせよカバー裏の表紙が文字で埋め尽くされていて笑える。
後、作者欄も弄られている。ISBNコードの類は無いけど。

さて。それでは内容、口絵も見ていこう。キノの旅はカラー口絵が他の電撃文庫と比べて多いらしい。
マグカップで何か飲んでいるキノ。旅の雰囲気が感じられる。

口絵イラストノベル「ファッションの国」―Fine Feathers Make Fine Birds.―
黒星先生にキノキャラの衣装替えを描かせるために書いたような話。フォト勢以外全員いる。エルメスも。陸も。師匠がウエディングドレスでキノが男装と言うのも色々考えさせる。
普通ラノベ作家が書いてイラストライターがそれに絵を付ける感じだと思うが、時雨沢先生と黒星先生はもっと密な連携を取っているのかな。

口絵イラストノベル プロローグ「渡す国・b」―Messengers・b―
キタキタ!aとbで先にb、結末から見せて後でどうしてそうなったか=aを書くキノの旅恒例のパターン!味わい深い話が多いのでこれは期待できる。
……フォト?!フォトの国か!しかもシズが出国している?!シズは定住を求めて各地を流離っているはず。フォトの国はその点問題などない筈。しかもシズもいい国だったと言っている。ならばなぜ出ていくのか?!これは気になる。気になりすぎる。
そして夕暮れのシズ一行も美しい絵。

口絵イラストノベル「遊んでいる国」―Invention―
山岳地帯をパラグライダーで。ショートショートの長さで絵と共に楽しめる。オチも軽いが悪くは無い。

目次
黒星先生のカラーイラストで彩られていて美しい。新聞連載時のものだろう。

目次の後のイラストも定番だよね。+運ばれてくるシリーズっぽい詩っぽい文章も。

「あとがき」―Preface―
いきなり後書きかよ!前書きじゃねえか!しかもカラー口絵で前書きやったことあるのに。
あとがき作家であった。
新聞連載を載せるからその説明として絶対に先に読む前に持ってきてるってのもあるか。新聞連載と書き下ろし小説は色々違うからその説明も必要だもんね。引きとか。
で、7巻のあとがきと繋がっている。
真面目な後書きだったからカバー裏をふざけたらしい。あれ後書きの一種なのか。

第一話「旅人達の話」―Kino&Hermes―
次行く国は生きている人がいる国だと良い。なるほど……

第二話「自然破壊の国」―Human Nature―
エルメスは人間が造った"大したもの"を見るのが好き。喋るモトラドとは一体何なのか。結構技術関連については色々博学のようだし……
キノによくあるリベラル批判だと思って読んでいると、最後のキノの言葉が深く感じる。

第三話「時計の国」―Memento Mori―
エルメスは基本科学とか技術とか好きだよね。まあモトラドもそうやってできたものだから当然の志向と言えばそうなのかもだが。
サブタイトルは有名な警句。時間に縛られて生きるのは不自然だが時間は全てを支配している。

第四話「左利きの国」―Do the RIGHT Thing!―
サブタイトルは英語で掛けてる訳ね。
時雨沢先生らしい、キノらしい、わかりやすい皮肉だが、ショートショートの長さだと軽快で良い。
キノの護身術もかっこいい。

第五話「割れた国」―Trigger Happy―
凝った構成からのまさかのキノコタケノコ論争。
キノのテーマの一つにこういう争いとか抗争とかいがみ合いとかそういうのがあるよね。

第六話「貧乏旅行の国」―Trouble Writer―
富は、手放そうと思えば手放すことができる。ただそれで困る人もいる。

第七話「楽園の話」―Exile―
シショーお祖母様。流し読みしてるとミスリードに見事に引っかかる。
なるほど現世から隔離されているので楽園。まあなんかの映画かドラマで似たような設定も聞くが設定は設定。
しかし普段名前は使わないって。師匠の若い時の話どっかで来るかな。
まあ師匠たちがドジ踏むとも思えないが、その割には貧乏くさいのはどうしてなんだろう。パーッと稼いでパーッと使う派?何に使っているんだ。どっかに金隠してるのか?
師匠の目的も隠されて淡々と「楽園」の描写が続く。
そして口絵イラストノベルで使ったパラグライダーを再利用とギミック尽くしの短編であった。

第八話「恋愛禁止の国」―the Prohibition―
よくわからんが、挿絵のハート形の錠剤、角のところが食道とかに当たって吐きそうになったりとかないのだろうか。至極どうでもいいが。
そしてキノの性別不詳系女子としての実力発揮。百合地獄。
そして、タイトルでもわかるように奇妙奇天烈な国。キノの世界はD&Dのミスタラめいた国と国とで技術も人も何もかも変わる世界。そして奇妙な法律や常識に縛られた国というのは基本系で、しばしばそれを想定も否定もせずにキノは過ぎ去る。
そういう相対性と言うか結論付けない、読者に考えさせる態度が私がキノの旅が好きな理由の一つである。
キノの言葉さえ省いてしまう辺り時雨沢先生の進歩というか先鋭化が窺える。

第九話「料理の国」―Original―
強欲と勘違いと技術が合わさって奇妙な結果が生まれる。
登場人物全員が事態を把握していないというのが素晴らしい。しかしまあ、料理にインパクトは重要かもね。特に名物料理には。

第十話「広告の国」―CounterMeasure―
まあ、多少なりとも有名人になると良いように利用されるというのは世の常。ステマにも利用される。しかし言いにくい名前の携帯電話会社だな。改名した方が良いんじゃねーのか。

第十一話「鉄道の国」―Missing Link―
挿絵の鉄道の重量感がヤバい。
しかしキノでも鉄ネタ使うようになったか。一つの大陸シリーズ終わったからって。
国家の選択。50年前の禍根をどうすべきか。重いテーマである。
そして、この話は新聞連載だが、珍しく次の話に(過去だが)繋がっている。

第十二話「旅の終わり」―Kino's Nap―
新聞連載最後のお話。だから旅の終わり。まあ本当にキノが旅を辞めるのではなく、区切りと言うのはいつでもつけられるという話。
しかし世界最高のハンモック場で眠って終わるとはこれほどのグッドエンドは無いのではなかろうか。

第十三話「神のいない国」―Let's Get Hermes!―
ほほう。タイトルからしてキノらしい実存主義的なお話。表折り返しで予告されているエルメス救出作戦。
バッシバッシとカルトの信者を迷いなく殺していくあたりキノ。必要が無いなら殺さないが必要なら殺す。MTGの色で言うとキノはたぶん黒?
この話はガンアクションとして見るのがいいだろう。最後辺りで脅威の存在が出てくるあたりもなんか昔のスパイアクションっぽくもある。電撃文庫の格ゲーとか出るし、出演してもいいようなキャラだからここいらで銃撃戦描写増やして格ゲー化しやすいようにする時雨沢先生の慈悲?まあ派手な銃撃戦書きたかっただけだろうが。しかしキノ、ナイフあんま使わないよね。いっぱい持ってるらしいのに。格ゲーの近接戦闘どうするんだ?
そして、モトラドが知る世界の真理ねえ。確かに、この世界に付いて何か知っていてもおかしくなさそうだが。それが明らかにされることがあるのだろうか。それがキノの本当の最終回になったりして。
麻薬のお茶に関してもなんか、前に出てきてたが……
16歳まではそこで暮らしていて、体は12歳のままだった。ふむ。…… キノの出身国の大人の国は12歳で「大人になる手術」を行っていたらしいが…… まあキノは成長してるし、関係ないか?あるとすると、その手術はまさしくある種の人間が大人になるためのもので、その手術を受けなかったために大人に成れなかった、とか?キノの尋問のしつこさにこんなことを考えてしまった。
ジーン。また出てくる可能性もあるか?

第十四話「私達の国」―Welcome!―
エピローグを除いた最後の話にこんなショートショートを入れてくるあたりセンスがいい。キノの旅は善悪を超越した考え方をしてるよね。超越したというと偉そうだけど、まあ善人だから悪人だからと言う話ではあまりない。いや、違うのか?

エピローグ「渡す国・b」―Messengers・a―
モトラドもそうだが喋る犬もなんかあるんかね。というかキノの世界の犬は全て喋るものなのか。
シズにとって住むに足る素晴らしい国。幼女を連れて旅をしてるし、さっさと妥協して身を落ち着けろと言う話だが。
ティーの助言を聞き入れてバギーを売らなかったわけだが、バギーを売ってたら、まあ産廃処分場は我慢するとして移住はできたんじゃないか?逆に、旅を続けたいからこそティーはバギーを売らせなかったか、それとも林道について何かで必要になると漠然に思ったからか?
まあシズでも魚が釣れるような川が汚染されるのは世界にとっての損失ではあるが。
ティーの記憶力。まあガキの記憶力は実際高いものではあるが、しかし相当なものである。
シズはどうあっても自分の正義を貫くというか、いい人なんだなあ。自己犠牲、献身。だから損をする。


そして黒星紅白先生のあとがき。あと描きか。黒星先生のあとがき割とネタバレあるから怖い。フォトもすっかりキノの旅になじんだなあ。一人だけ旅は終了してるが……

今回のキノの旅は新聞連載も含めて大ボリュームで、しかも質が良い。
学園キノとか書いて忙しくしなかったからかな?特にキノの世界自体に関わるような伏線と言うか触りが描かれているのが素晴らしい。
いつか、これらの謎が解明されるのか。旅人達はまた巡りあうのだろうか。フォトの国にキノとか入ってくることはあるのかな?

今後もキノの旅、及び時雨沢先生の作品には大・大注目である。
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テーマ:読書 - ジャンル:サブカル

  1. 2013/10/11(金) 23:41:51|
  2. | トラックバック:1
  3. | コメント:2
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コメント

こんにちは

こんにちは。評論興味深く読ませて頂きました。
私もキノの尋問に思うところがありまして、もしかしたら大人の国では、手術をうけなければ成長が止まってしまうのではないかと考えました。キノが成長してる描写がないのもそのせいではないかな、と。。
  1. 2013/10/15(火) 19:03:50 |
  2. URL |
  3. さき #-
  4. [ 編集 ]

Re: こんにちは

> こんにちは。評論興味深く読ませて頂きました。
> 私もキノの尋問に思うところがありまして、もしかしたら大人の国では、手術をうけなければ成長が止まってしまうのではないかと考えました。キノが成長してる描写がないのもそのせいではないかな、と。。

読んでいただいてありがとうございます。

私も最初その可能性について思いましたが、それだと師匠のとこで暮らしている間(何年いたかは思い出せませんが)で成長せずそのまま12歳の肉体で旅していると考えるのはやや不自然かなと思って棄却しました。

しかし、改めて考えてみると、確か何年も旅しているはずですし、まあ12歳の肉体でもありえなくはないのかなとは思えてきます。それか個人差があってキノも成長がだいぶ遅いぐらいである、というのはあり得る話かもしれませんね。
今回の巻はキノの旅自体の設定に関わる話が少なくなかったように思えます。今後どうなるのか注目ですね。
  1. 2013/10/15(火) 20:11:10 |
  2. URL |
  3. たていと1 #-
  4. [ 編集 ]

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