ネット世代の雑評論

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ニーチェの「この人を見よ」読んだから感想

フリードリヒ・ニーチェ - Wikipedia
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気が向けば哲学書を手に取る、というか、まあ色々調べてたら結構面白そうだったので読んだ。
面白かった。

まず、章タイトルが秀逸である。
なぜ私はかくも賢明なのか
なぜ私はかくも怜悧なのか
なぜ私はかくも良い本を書くのか
なぜ私は一個の運命であるのか

タイトルの「この人を見よ」の「この人」、章タイトルの「私」とは著者ニーチェの事なのだ。
結構、というか完全に誇大妄想的にも思えるが、まあこれは一種の皮肉・自己風刺でもある、であるとか訳者のあとがきに書いてあったが……さて。
一応、ニーチェの思想(超人とかなんとか)を考えれば一応納得がいかなくも無いが、やはりギリギリであろう。

ニーチェはこの本を書いて程無く脳腫瘍による狂気に陥った訳だが、この本にもその狂気の片鱗が表れている。
あとがきによると、正気の中に狂気が混じり、正気の認識がより一層鋭くなっている一方、限界を超えて狂気が露呈している部分もあるとか何とか色々書いてあった。それなりに同意できる意見である。


ニーチェはその時代の常識と戦った人間である。キリスト教の欺瞞を暴き、実存主義の先駆者として生き、多くの批判に晒され続けた。
まあニーチェの人生についてはもっと専門的なところで知って欲しいが、ごく簡単に言うと無神論者的で常識に反した事ばかり語っていたという話である。まあそんなことやって人生がうまくいく訳はない。
まあそんなこんなの人生で、やはり自尊心が凄まじい事になっていたのか、その芸術に通じた文章力で相当滅茶苦茶な事ばかり書いている。

引用
私の予測では、近いうちに私はかつて人類に化せられた欲求の中でも最も困難な欲求を人類に突き付けなければならなくなる。それだけに、そもそも私が誰であるのかを言っておくことが必要であるように思われる。こんな事は私が言わなくても世間の方で知っていて良いことであろう。

序言のしょっぱなからこれである。

引用
病気が原因で知性が乱れるというようなこと、否、熱が高くて反昏睡状態に陥ることでさえ、今日までの私にはまるきり無縁の事柄であった。こういうことがどういう性質を具えどの程度頻繁に起こるかについて、私はものの本を通じてやっと学び知らなくてはならない始末だった。私の血はゆったりと流れているのである。私を診察して熱があると確かめる事のできたものはついぞいない。ある医者は、私を久しく神経病患者として扱って来たが、とうとう次のように言った。「間違えていました!貴方の神経は何ともありません。私自身が神経質になっていただけです」と。私の体の何処か一部が局所的に衰弱退化するなどということは、絶対に無い。」

完全に滅茶苦茶である。何か物凄い勢いを感じる。

引用
私は他人に反感を持たれるようにする術がどうしても呑み込めない。

え。

引用
……およそ私の本より以上に、矜持に満ちて、それでいて洗練された種類の書物がほかにあるなどとは、断じて思えない。――私の書物はそこここで、地上において到達し得る最高のもの、あの冷笑主義の域に到達している。このような書物を征服するには、繊細きわまる指と、大胆きわまる拳との、両方をもってせねばなるまい。魂に少しでも虚弱な処があったら、もう駄目だ。絶対に駄目である。消化不良の気味が少しあるだけで駄目なのである。

絶好調のようだ。

引用
私は人間ではないのである。私はダイナマイトだ。

名言である。ニーチェ本人しか使えないけど。


極々一部を抜き取っただけでこれである。
たしかに矜持に満ちた本である。読んでいて自然に笑みがこぼれる。
正直に言えば、笑える。



実際、哲学書だからといって必ずしも気合を入れて読まなければならない訳ではない。
なんにせよ、ニーチェという人物とその思想、考えについて多少なりとも知ることが出来る。
どれだけ誤解したとしても、少なくとも面白かった、笑えた。私はそれでまず十分だと思う。
物凄いパワーを感じさせる本であった。
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テーマ:読書 - ジャンル:サブカル

  1. 2012/07/25(水) 03:23:32|
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